社会認知受けた非営利団体/NPO法人の現状  (上)
1000余団体が活動利益を公益活動に


 1998年3月19日に日本の国会で成立したNPO法(特定非営利活動法人促進法)。98年12月1日から施行され、現在1000を超える団体がNPO法人として活動を開始している。日本ではまだ、それほどなじみはないが、米国など海外では公益サービスをはじめ、福祉問題や教育活動など多くの分野に進出している。

広がる重要性

 NPOとは、Non_Propfit Organization の頭文字をとったもので、直訳すると非営利団体、民間団体ということになる。NPOは、営利を追求する企業とは違って、上がった利益をその団体が目的とする公益的な活動などに当てる。だからといって無償のボランティアとは違う。報酬を受け取ってサービスをしてもいいし、スタッフとなった人たちが給料を受け取ることも構わない。だが、その余剰利益を関係者が受け取ることはできない。

 日本でNPOへの関心が高まったのは、95年に起きた阪神・淡路大震災でのボランティア活動だった。

 また近年、環境、教育、福祉など社会的な問題が多く提起されているなかで、同じ意識を持った人たちが集まって、問題を解決していこうとする活発なNPOの活動が、その重要性を認識させることにもなったといえる。

阪神での教訓

 阪神・淡路大震災では、ボランティアをしたいと被災地に飛び込んだNPOが、法人化されていないために多くの制限を受けた。そのほとんどが、社会的な認知度がなくて行政に受け入れられなかった。

 こうした教訓が、NPOを法人化しようとの動きにつながり、議員立法による法律制定となった。

 ではNPOの法人化とはどういうことなのか。法人化すれば、社会的に正式に認知された団体として、事業の受託、他機関との取り引きなど、様々な契約を法人名で行うことができる。

 だが当然、法人としての責任も発生する。事業報告書や収支報告書の所轄庁への提出が義務付けられ、団体の財産目録などの情報を公開しなければならない。こうしたことが、団体の活動の透明性、社会的な信用にもつながる。

 現在、国際的に活動する団体などは、法人格を持つのは必須である。欧米はもちろん、アジアでも日本より早くNPOの法人制度が整備されている。NPO法人への国籍条項はなく、外国人であっても社員、役員になれる。

、4ヵ月で認証

 NPO法人は公益法人にくらべ、簡単に取得できる。

 第1に、NPO法人の設立にあたっては10人の社員が必要なだけで、資金はゼロ円でも設立できる。公益法人である社団法人の場合は、通常年間2000万から3000万円の運営資金があることが条件とされ、財団法人の場合は、通常3億円以上の基本財産が必要。さらに社会福祉法人でも、1億円以上の基金が必要だ。

 第2に、法律の要件さえ満たしていれば設立が認められる。設立は「許可」ではなく「認証」である。「認証」とは、法人化に伴う書類整備が正当に行なわれていることを公的機関が証明すること。

 「許可」の場合は法律の要件を満たしていても所轄庁の判断で「ノー」とされることもあるが、「認証」の場合はない。不認証になった場合も理由が明記されることになっているので、修正して再提出することも容易だ。

 第3に、NPO法人の所轄庁は、都道府県庁で、2つ以上の県に事務所がまたがる場合は経済企画庁となる。従来の公益法人の場合は、その分野を担当する各省庁の管轄下にあるが、NPO法人は省庁から独立した存在で活動もしやすい。

 また、申請から認証までの期間が4ヵ月以内と短期間で設定されているのも、2、3年以上かかる公益法人とは違う点だ。

社会的信用がアップ、法人化のメリット

 代表者個人の責任で、団体を維持することには限界があるが、法人になると、その活動が社会的に認知され、活動の幅を広げることができる。

 では、NPO法人になったらどのようなメリットがあるのか。

 銀行口座、資金の調達・借入、事務所の賃貸契約、不動産登記などが法人名でできる。補助金、助成金、企業や自治体などの事業が受託できやすくなる。また、公的な施設も利用しやすい。

 そして何よりも、法人になることによって得る社会的な信用という点では、今後さらに重要性がましてくる。

 日本社会も国際化が進むなかで、口約束か個人名義でなんとかやってこれた団体が、今後長期的な展望を持って活動しようとした時、社会的な信用は必須だ。契約は信用で結ぶからだ。                                                                (金美嶺記者)