そこが知りたいQ&A/朝ロ条約締結の意味は
冷戦後の新しい友好関係構築
朝鮮半島の安定にも寄与
Q 朝鮮とロシアの友好善隣協力条約が9日に締結された。どういう内容なの か。
A 条文が公開されていないので詳細なことは不明だが、朝ロ外相が発表した共同声明によると、同条約は (1)両国関係の新たな段階のスタートになり、(2)双務関係全般の基礎になる基本法的文書であり、(3)いかなる第三国の利益も侵害せず、(4)一方が他方の自主権、独立、領土保全に反対する第三国との条約、協定を締結せず、いかなる行動、措置にも荷担しない義務を負い、(5)両国間の友好協力関係を各分野にわたって拡大発展させ、(6)自主、平和統一、民族大団結の原則に基づいた朝鮮の統一を支持する内容となっている。
Q 両国関係の新たな段階のスタートというのは、どういう意味か。
A 周知の通り、ロシア連邦は、1991年のソ連崩壊後にできた国だ。もちろん新生ロシアは、旧ソ連が朝鮮と交わした条約(1961年に締結、5年ごとに見直しすることが明記されている)を継承すると言明、ソ連が崩壊した後も朝鮮とロシアは旧条約に基づいた関係を維持してきた。
しかし、冷戦終結という世界的な情勢変化の中でロシアは、95年に旧条約の破棄を通告し、両国間には新しい基本条約の締結が求められていた。
今回の条約は、こうした世界的情勢の変化を受けて、朝鮮とロシアとが新たな段階の関係をスタートさせるために締結された。つまり東西冷戦という枠組みの中で、東側同盟国だった朝鮮とロシアの関係を、冷戦終結後の新しい善隣友好関係へと押し上げるというものだ。
Q 報道などによると、旧ソ連との条約には、一方が侵略を受けた場合、もう一方は軍事を含むあらゆる支援を自動的に行うという項目があったが、今回の条約ではこの項目が削除されているという。これによって今後、朝鮮半島の力関係に変化が生じるのではないか。
A 侵略を受けた場合の自動介入項目が、削除されたかどうか、公式に発表されたものはない。
それから朝鮮半島の力関係だが、基本的に変化はないものと思われる。というのは、朝鮮の国防政策の基本は自衛で、他国の軍事的保護を受けなくても国を守る体制ができているからだ。事実、93、94年の核疑惑騒動のとき、米国は軍事的方法で朝鮮を屈服させようとしたが、できなかった。当時、ロシアは傍観する立場だった。
また68年に米国の武装スパイ船が、元山沖で朝鮮人民軍に捕獲された「プエブロ」号事件のとき、当時のソ連が船と乗組員を米国に返還するよう朝鮮に様々な圧力を加えたこともあった。それでも朝鮮は屈しなかった。
この問題と関連して注目されるのは、白南淳外相が、ロシアのイワノフ外相との会談で、米国などが騒いでいる「ミサイル脅威」について、多極化を主張する大国をけん制し、絶対的な優位を占めようとする策動であると指摘し、主権国家の自主権に属する人工衛星打ち上げやミサイル発射問題で、朝鮮を差別視しようとするいかなる試みについても断固対応するという原則的な立場を表明した点だ。
現在、朝鮮は朝米会談などで、米国に対して停戦協定を平和協定に替えることを要求しているが、その一方で米国などの侵略行為については、断固とした自衛力で排除することを示したと考えられる。
また会談でイワノフ外相は、朝鮮半島の平和と安定を保障するためには、南北統一を実現すべきで、そのためには南朝鮮の米軍を撤退させなければならないという朝鮮側の原則的な立場に理解を示している。
Q 今後、朝鮮とロシアの関係は、どのように発展するのか。
A 消息筋によると、白南淳外相が今年下半期中にもロシアを訪問する予定。イワノフ外相が訪朝時に白南淳外相の訪ロを要請し、白外相が受託したというものだ。白外相のモスクワ訪問が実現すると、87年の金永南外相(当時)以来、13年ぶりとなる。
また両国は、97年以来、中断されている経済・科学・技術共同委員会を今年度中に再開することでも合意し、さらにロシアは、イワノフ外相の訪朝に際して、10万トンの食糧を支援したとも言われている。
白南淳外相は、内外記者との書面インタビューで、今回の条約締結によって「両国間にはすべての分野で協力と交流をいっそう強化し、友好協力関係を拡大発展させられる政治法律的保証が整えられた」と述べている。この方向で朝ロ関係は進展するだろう。