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航空運賃の自由化、メリットと留意点
「早割」は最大66%。マイル、ネット予約なども好評
多彩なサービスで便利性向上
ただし内容の十分な下調べ必要
ゴールデンウィークや夏休み、年末年始に飛行機を利用する同胞は多いと思う。今や代表的な移動手段の1つであるが、新幹線と比べると割高感があるのも事実だ。その飛行機の運賃が今月から軒並み値下げされた。航空法の改正で国内線の運賃設定が完全自由化され、各社が多彩な割引サービスを競って提供し始めたからだ。消費者にとっては、選択肢が増えて利便性は向上した。そこで、これらの割引サービスのメリットとデメリット、利用する際の留意点について見た。
●主な割引サービス● 早期割引(早割)
「出発日の28日前」など一定期間内にチケットを |
法改正がきっかけに
改正航空法が施行された今月1日以降、新聞や雑誌の広告で、航空各社の「運賃割引」の文字をひんぱんに目にするようになった。
今回の法改正のポイントは、(1)国内線運賃の完全自由化 (2)新規路線への参入や既存路線からの撤退を制限していた「需給調整規制」の撤廃――の2点だ。
これまでは、航空運賃の設定には運輸省の許可が必要だったのだが、法改正を機に許可制から事前届出制に変わり、各社が実情に即して運賃を自由に設定できるようになった。国際線ではすでに自由化によって各社独自の割引制度が定着しているが、国内線では初めてのことだ。
各社は相次いで割引運賃のバリエーションを増やし、安さと手軽さをアピール。全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)、日本エアシステム(JAS)の国内大手3社をはじめ、各社が一斉に往復割引制度を導入したほか、各社がそれぞれ、アイディアに富んだ多彩なサービスを採用している。
各社が独自色強調
現在、日本で利用できる主なサービスは別表の通り。このうち利用者になじみが深いのは、国際線ではおなじみの早期割引制度(早割)やマイレージサービスなどだろう。
早割は、ANA、JAL、JASなど各社が力を入れている制度の1つ。「出発日の28日前」など、一定期間内にチケットを予約購入した人を対象に運賃を割引するものだ。料金のお得感に加え、予約した時点で便名や席が確定できることや、格安航空券と違い事前にチケットの発券を受けられる安心感が、利用者に受けているようだ。
マイレージサービスは、飛行機に乗るごとに区間や距離に応じて付くポイント「マイル」を貯めていき、有効期限を迎えた時点での積算数に応じて無料航空券などのサービスを受けられるもの。小売店系クレジットカードのポイントサービスと似たものだ。1997年からは国際線だけでなく国内線でもマイルが付くようになり、また提携他社で貯めたマイルを使える相互利用サービスも広がりつつある。
このほか、ANAの期間限定割引制度や、ホームページを通じてオンライン予約した人を対象に約25%割引するJALの「インターネット運賃」、介護目的の帰省客の運賃を約37%割引するJASの介護割引制度など、各社が特色ある割引サービスを提供し、話題となっている。
条件限定など不便も
これまでは「安く乗るなら格安チケット業者が扱う航空券」というのが常識とされてきたが、国内各社が相次いで値下げに踏み切ったことで、格安航空券との価格的な格差はだいぶ縮まってきたと言える。
だが一方で、実際に飛行機を利用する人に聞くと、「割引制度は期間が限定されていて、キャンセルが難しいなど不便な面がある」「席は早い者勝ちなので、予約スタート当日に予約しようとしても席が埋まってしまい、仕方なく正規運賃で乗る場合もある」など、必ずしも便利とは言えない点も浮き彫りになっている。
同胞旅行代理店の中外旅行社(東京・上野)では、運賃自由化に伴う割引サービスの広がりは、消費者にとっては喜ばしい現象だとしながらも、サービスを利用する際の留意点をいくつか挙げている。
同社が指摘するのは、値下げの点がやたらとクローズアップされているが、最低運賃の値下げに伴い、最高運賃も現行運賃の10〜15%値上がりすることを知っておいてほしいということや、割引の適用条件や制限をよく把握して、自身の利用条件に合った予約・購入をしてほしいということだ。
また、「とくにインターネット割引が大きく取り沙汰されているが、旅行代理店などの媒介がない分、予約・購入時の留意点や最終判断は利用者自身に委ねられている。このため、利用者の自己責任、自己学習の必要性が高まっている」とし、十分な下調べの必要性を訴えている。
利用者にとっては、ただ「安い」というメリットだけでなくデメリットも十分に把握し、自分のプラン、予算に合ったサービスを選ぶことが重要と言えそうだ。(柳成根記者)