南朝鮮のドキュメンタリー映画

「息づかい」/邊永※(※=女偏に主)監督
元日本軍「慰安婦」ハルモニたちの生の輝きを描写


「命が燃え尽きるまで闘い続ける」
4月1〜28日、東京・BOX東中野で上映

 ドキュメンタリー映画「ナヌムの家」(1995年)、「ナヌムの家U」(97年)で、かつて日本軍による「慰安婦」という名の性奴隷にさせられた南朝鮮の女性たちの証言と、今を生きる姿を撮り続けた邊永※(※=女偏に主)(ピョン・ヨンジュ)監督(36)の完結作「息づかい」が、4月1日から28日まで東京・BOX東中野で上映される。「息づかい」は、「ナヌムの家」の製作以来の邊監督及び若いスタッフたちと、元「慰安婦」のハルモニたちとの約7年間に渡る対話を集大成したもので、ハルモニたち自身が自らの意志で奪い返した生の輝きが収録されている。

過酷な人生の証言を記録

 

 

日本大使館前で公式
謝罪を要求するハルモニたち

 公開に先だち、去る7日から10日まで来日した邊監督は、関係者たちの前でこう述べた。                                                

 「亡くなった被害者たちに対する哀悼と懐かしさを込めて、『息づかい』を完成させた。前回の2作が、 ナヌムの家 を多様な共同体的空間としてとらえたのに対し、今回は隣人や家族と共に暮らす他のハルモニたちから、過去から現在までの証言をじっくり聞くことに全力集中した」。映画は、「慰安婦」として最初に名乗り出た金学順さんを始めとした犠牲者たちの追悼式が、支援グループによって執り行われている場面から始まる。

 その後カメラは、かつて台湾の慰安所に送られ、現在進行中の裁判を他人に任せられないと大学の法学部に入学して学び、今回インタビューアーとなったリ・ヨンスさん(72)と共に、フィリピン、ソウル、テグの各地を巡り、ハルモニたちの過酷な人生を伝える。後半は、過酷な体験を綴った文章で、全泰壱()文学賞を受賞したキム・ユンシムさんの姿が映し出される。

 自分の体験を話したことがないし、受賞作も読んでいないだろう、と思っていた聴覚障害の一人娘に、インタビューアーが手話で尋ねると、実はそれを読んでいた。

 驚きながらも、そのままミシンに向かうユンシムさん…。見る者に言い尽くせぬ深い感動を与えずにはおかれない。

 互いに悲しみを共有しあい、強く生きていこうと誓いあうハルモニたち。自分たちの姿を胸のうちであざ笑う人々に対して強い怒りを現し、日本政府に対して公式的な謝罪と賠償を求める彼女たちはこう訴える。

 「命が燃え尽きる日まで、闘い続ける」、「幽霊になってでも追及するだろう」

 まさに、そこに映し出されたハルモニたちの対話は、現在が介入することのできない、歴史の完全なる復元であった。

「カメラが呼び起こした歴史の真実」

互いに固いきずなで結
ばれるハルモニたち


 作品は、昨年10月の第4回プサン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞した。反響は、「カメラが呼び起こした歴史の真実」、「自分自身の息づかい、すなわちアイデンティティーを見つけ出す勇気を描いた作品」と、様々であった。

 邊永※(※=女偏に主)監督はこう強調する。

 「歴史の闇から表れ、他人と語り合う方法のなかった彼女たちに、意志の疎通を図る機会を提供できたと思っている。『息づかい』は、ハルモニたち自らが書いた歴史書だ」。そして「多くの日本人が、映画を通じて歴史の真実と向き合ってほしい」と。   (金英哲記者)


  =全泰壱(チョン・テイ)1970年11月13日、ソウル清渓川6街「平和市場」内の過酷な労働条件に抗議して焼身自殺した。享年22歳。
 配給=パンドラ(TEL 03・3555・3987)