社会認知受けた非営利団体/NPO法人の現状
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税負担、経理記帳の義務
解散時の残余財産は公的機関へ
寄付先を指定
NPO法(特定非営利活動法人促進法)が整備されたことによって、法人となったNPOは任意団体に比べ、社会的な認知を受けやすくなった。だが、それに当たって、義務も生じる。
まず情報公開の義務で、事業報告書、財産目録、貸借対照表、収支計算書、役員名簿を毎年、所轄庁に提出しなければならない。NPO法にそって総会や理事会を開催し、会計書類を整え、事業報告書を作成し、定款や役員の変更が生じた時は、所轄庁への認証申請や届け出が必要となる。また、法人としてきちんと税を負担し、経理も正確に記帳しなければならない。
法人を解散した時は、残余財産を公的機関や公益を目的とする団体などに譲渡することが義務付けられている。たとえば、NPO法人または地方公共団体、財団法人、社団法人、学校法人、社会福祉法人などで、設立当初、定款に寄付先の指定をすることになっている。設立資金は、個人に戻らない。
例を上げると、「〇〇〇民族学校父母の会」というNPOを設立、法人として認証された後、何年かして解散した場合、その際の残余財産を学校法人となっている民族学校に譲渡することを定款で指定しておけば、学校に残余財産がいくことになる。
これらの義務をデメリットと見るか、健全さを増長するメリットとみるかは、個々の団体の特徴によるといえる。
自分の応援団体へ
議員立法により成立した同法は、欧米などと比べると、検討すべき余地がまだまだある、と指摘されている。
その最大のものは、法人への寄付の控除が認められておらず、税制面での優遇措置が施されていないことだ。米国などではNPO法人への寄付は、一定の限度内で損金算入・所得控除することができる。企業や市民たちが税金を払うかわりに自分の応援する団体に寄付しようということになる。
こうした点を踏まえ、昨年結成された自民党NPO特別委員会(委員長=愛知和男衆院議員)などは、来年の2001年11月までに個人寄付に関する新しい所得控除の創設など、税制面での見直しを検討し始めた。
税制面における優遇措置は、NPO活動への積極的な後押しとなる。
一番進んでいる米国では、約120万の大小のNPOがこうした後押しによって活動し、大学を卒業する学生の1割がNPOに就職するといわれている。
主なものでは、有名なところでリンカーンセンター、そしてハーバード大学もNPO法人だ。最大規模は全米退職者協会(AARP)で、米国の50歳以上の約半数(3300万人)が加入している。年会費を徴収し、加入した人に対する社会的な地位向上に尽くし、各種保険加入サービスなどを行っている。
専門家で議論を
NPOは無償のボランティアではなく、利益や報酬を受けてもいいが、それらをその団体が目的とする公益的な活動などに当てなくてはならな。
これまでの、NPO活動=ボランティア(無報酬)、個人の献身、という考え方ではなく、今後は、団体を経営する視点で、新しい活動を展開するというベンチャー的な発想を持つ必要がある。
京都在住の白吉雲司法書士は、「専門家や実際に活動する人たちで議論や研究をして、こうした法人制度を利用して、もっと活動の幅を広げていくべきだ」と指摘する。
(金美嶺記者)
活動を12分野に限定/貢献、寄与でも認証
NPO法では、NPO法人を12分野の活動を行う団体と定めている。なぜかというと日本には、すでに公益法人(社団法人、財団法人等)、社会福祉法人、学校法人、宗教法人などがあり、それらとの棲み分けが必要だとして限定したものだ。
12分野とは(1)保険、医療または福祉の増進 (2)社会教育の推進 (3)まちづくりの推進 (4)文化、芸術またはスポーツの振興 (5)環境の保全 (6)災害時の救援活動 (7)域安全活動 (8)人権の擁護または平和の推進 (9)際交流・協力 (10)男女共同参画社会の形勢の促進 (健全育成前に上げた11の活動に関する連絡、助言、援助活動。
12分野に限定してはいるが、ただし直接ここに当てはまらない活動でも、この分野に何らかの形で貢献、寄与すれば認められることになっている。
東京・西新橋にあるNPO地域交流センターは、8日にNPO法人の認証を受けた。様々な分野の人たちと交流、連携の機会をもうけ、豊かな社会を作っていこうと立ち上げた同センターの斉藤隆さんは、「申請書の作成は複雑で、その作業に追われてしまいやすいが、法人認証後は行政や業社とのやりとりなど、あらゆる点で仕事がしやすくなった」という。
また、今NPO法人は増え続けているが、社会との接点で、何を目的としているのか明確にしていかなければ、一度認証をうけたとしても今後は、淘汰されていくのではと、斉藤さんは指摘する。