禁煙成功談
私の場合
朴鎮※(※=林にさんづくり) 医協中央理事
舞鶴・青葉診療所所長
「禁煙してよかった」と常にイメージすること
失敗と成功の違い
たばこによる日本の医療費や喪失国民所得は、5兆6000億円にも及びます。
それを聞いて、禁煙をしようと思い立つ人はいないと思いますが、禁煙に成功した私の体験談を聞くのも悪くはないでしょう。
私がたばこを吸い出したのは、32年前の20歳の時からでした。それが1年半前にきっぱりと禁煙し、現在に至っています。
幾度となく試みては失敗していたのに、今回はなぜ成功したのか、その違いをはっきりさせたいと思います。
私の経験からして、自分の喫煙が「ニコチン依存」なのか、「習慣依存」なのかという事は、どうでも良いように思えます。むろん、病院の「禁煙外来」での厳密なプログラムや「ニコチンガム療法」なども必要ありません。
禁煙成功に必要なのは、「禁煙の動機」と「喫煙による自分の身体の不調」について、その症状を出来るだけたくさん具体的に自覚することです。
そして、禁断症状はいつまでも続くものでは無いことを認識するのも大事なことです。
「禁断症状」はなくなる
動機については、「家族が止めて欲しいと言うから」とか、「たばこは身体に悪いから」でも良いと思います。ただ身体の不調について(これが一番大切だと思うのですが)、いくつか例を上げて見ます。
(1)いつからかたばこを吸うと、そのつど、以前とは違ってなぜか身体がだるくなり、何となく無気力になり始めた。
(2)深呼吸し思い切り息を吐いた時、肺の奥でゴロゴロと音がし、咳が出る様になっているのに気付いた。
(3)風邪もひいていないのに毎朝、黒いススの混じった様な痰(たん)が出る。
(4)たばこが、吸う前に期待したほど美味しくなくなった。
禁断症状の期間については、それがたとえ何年続くとしても、いつかは無くなるという確信が大切です。
倦怠感もなくなる
では私の場合、禁煙開始後、どうなったかを具体的に述べましょう。
まず禁煙直後から私を悩ませた症状は、「手のひらがポカポカほてる」「何となくイライラして落ち着かない」というもので周期的に襲って来ました。これは約3ヵ月ほど続いたように思います。しかし、悪いことはそれだけで、その後は良いことばかりです。
禁煙開始後、数日もするともう毎朝の黒ずんだ痰が出なくなりました。そのうちに、思い切り息を吐いても何ともなくなりました。咳も出ないのです。当然のことですが、たばこを吸わないので、喫煙後の倦怠感も有りません。
歯のヤニはそのまま
たばこが吸いたくなれば、そのつど、禁煙前後の変化を具体的に思い起こし、禁煙の良さを認識することで、我慢できました。
私の場合は「禁煙外来」で指導するように、コーヒーやアルコールを控えたり、灰皿を処分したり、「喫煙を誘う場所へ行かない」とか「水を飲む」「時計を見て我慢する」といった方法は一切しませんでした。
大切なのは、「常に禁煙して良かった」とイメージすることです。それが出来れば禁煙は100%成功します。これが私の経験です。
私は禁煙後、1年半たった現在、まったくたばこを吸いたいという気分にはなりませんし、過去にたばこを吸っていたという実感もありません。
ただ残念ながら歯に染まったたばこのヤニは、今も変わらない様です。
(パク・チンビン 在日本朝鮮人医学協会中央本部理事、青葉診療所所長。京都府舞鶴市行永東町26―6、TEL (0773・63・7756)※「私の禁煙体験談」について原稿を募集します。貴重な体験があれば「健康・趣味」担当係まで連絡を。)