イカ、カニの宝庫/東海に「恩徳漁場」設置
南北初の漁業協力合意


当惑する南当局、民間事業に介入
「政経分離」の太陽政策と矛盾

 北の民族経済協力連合会(民経連)と南の全国漁民総連合会(全漁総)が2月20日から26日まで北京で協議し、南北の民間級漁業協力を行うことで合意(共同報道文全文)した。合意内容は、朝鮮東海の経済水域の一部漁場を南朝鮮漁民に提供するというもの。1日現在、南朝鮮当局は同合意を「承認」していないが、実現すれば分断史上初の水産分野における南北協力事業となり、民族の和解と団結に大きく貢献するのは間違いない。

民族水産発展に貢献

 共同報道文によると、民経連と全漁総は基本合意書と付属合意書を交わし、当面して北側が漁場を南側漁民に提供し、ひいては民族水産業の統一的で自立的な発展の促進に貢献するとしている。

 北側が提供する漁場と言うのは、82年に締結された朝・日民間漁業暫定合意書の水域とほぼ同じで、「恩徳漁場」と名付けられた。ちなみに同水域は、イカやマス、カニの漁場として知られ、日本は入漁料を支払わずに86年まで同漁場で約1兆円の水揚げを上げていた。

 「恩徳漁場」で操業できるのは、全漁総所属の漁船だが、必要に応じて双方の合意のもとに他の企業、団体も利用できる。

 操業開始は今年の春からで、5年を周期に双方の協議のもと続けるとなっている。

南漁民に救い手

 昨年1月に発効した南朝鮮と日本との漁業協定は、朝鮮の領土である独島が明記されていないのをはじめ、中間水域を大幅に譲歩し、南朝鮮漁船の操業を制限するなど日本に一方的に有利な内容となっている。

 この協定の締結によって南朝鮮漁民は操業中止など莫大な損害を被り、その額は1兆725億ウォン(現在のレートで約1050億円、ハンナラ党議員)に上ると言われている。とくに釜山や慶尚南北道など東海で操業する漁民らは、新協定によって漁場から締め出されるなど、壊滅的打撃を受けた。

 こうした事態を打開するために全漁総が昨年8月、民経連に北の経済水域内での操業を要請し、民経連がそれを受け入れて今回、合意に達した。

「未承認」盾に難色

 この合意に対して南朝鮮当局は、当惑を隠しきれないでいる。というのは、全漁総が、当局の「許可」を得ないで北と交渉したからだ。

 南朝鮮では、民間人および民間企業が南北協力事業を行う場合、まず当局に北の関係者と接触する旨を申請し、「承認」を得てから交渉に臨む。そして協力事業について、ある程度のメドが立った時点で「協力事業者承認」を、北と契約、合意書を交わした時点で「協力事業承認」をそれぞれ得て、はじめて南北協力事業を開始することができるとなっている。

 全漁総は、「当局の承認」を得ずに民経連と接触したので「実定法」違犯にあたり、よって合意は認められないと言うわけだ。

 また全漁総が、全国的な代表組織でなく、慶尚南道および釜山の漁民だけの組織であることも、当局が「承認」に難色を示している理由の1つだ。全漁総が民経連と接触する以前に官辺団体の水産業協同組合(水協)が、北と南北漁業協力問題で協議したが、合意に至らなかったという経緯がある。

 北は南の漁業界を「代表」する水協を無視し全漁総を相手にすることによって、当局と民間の分離を図るよう画策していると南朝鮮当局は見ているのだ。

 さらに、今回の合意を容認した場合、これが前例になって今後の南北協力事業を統制できなくなる。

不退転示した全漁総

 かといって南朝鮮当局には、民経連と全漁総の合意を認めないわけにはいかない事情もある。

 なによりも総選挙の日程が押し詰まっているなかで、慶尚南北道の票を1票でもかき集めたい金大中「政権」にとって、合意の不許可は、慶尚南北道においてさらに不利な選挙戦を強いられることになる。

 次に合意を不許可にした場合、南北関係における政経分離原則を当局が自ら破ることになり、それは金大中「政権」の看板である「太陽政策」に傷が付く結果を生む。

 また、日本との漁業協定締結にあたって一方的に譲歩せざるを得ない状況に追い込まれたのは、南朝鮮当局のミスが大きく、協定締結後も当局は、被害漁民に対してこれといった救済策を講じなかったという事情もある。

 全漁総は先月28日に発表した声明で、「政府がこの事業を遅延もしくは不許可にした場合、全東海岸漁民は承認するまでたたかう」と明らかにしている。

 こうした事情からみると南朝鮮当局は、水協を窓口にするなどの条件を付けて民経連と全漁総の合意を承認せざるを得ないのではないか。  (元英哲記者)

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