朝・日会談再開、今世紀中の解決へ


過去の謝罪、清算が基本
背景に朝米進展、朝伊国交樹立も

 朝・日両政府は7日、(1)朝・日国交正常化のための政府間本会談を4月上旬に再開(平壌、東京、北京か第三国の順)し、(2)朝・日赤十字会談を13日から北京で行うと発表した。政府間会談は、92年11月以来、実に7年半ぶりの再開となる。すでに両国は、8回の会談を通して相手側の主張を熟知しているが、過去の清算、植民地支配に対する謝罪、補償という根本的問題について日本政府が、どれほど誠実に対応するかが鍵となる。

4月上旬に平壌で

 政府間会談は前回同様、(1)国交正常化に伴う基本問題 (2)経済的諸問題 (3)国際問題 (4)諸問題の4つの議題について討議すると思われる。

 これまでの会談では1910年の「日韓併合条約」など旧条約について「当初より不法で無効」(朝鮮)「合法でかつては有効」(日本)、経済諸問題では「賠償と財産請求権の2形態を適用、日本には財産請求権なし」「財産請求権の範囲内で処理」と双方の主張は平行線をたどっていた。

 旧条約の合法性については、これまでの会談で朝鮮側にことごとく論破されており、これ以上、合法性を主張するのは困難と見られる。また日本側が執着している1965年の「韓日基本条約との整合性」についても、南朝鮮で同条約見直し論が高まっていることから、説得力を持たないだろう。

 第3議題についてはその間、大きな変化があった。日本が主張していた「朝鮮の核開発疑惑」が、朝米関係の進展によって解消されたのだ。日本は新たにミサイル問題を、さらに第4議題でも行方不明者問題を持ち出すと見られる。

 しかし、ミサイル問題は朝鮮の自衛権に属すもので、日本に口を挟む余地はない。行方不明者問題も朝鮮の当該機関が調査して該当者がいないことを日本に通告したという経緯がある。外交常識から言えば、物的証拠もなく、当該機関が調査して、そのような事実がないと判明したことを交渉の場に持ち出すことはあり得ない。

 これまでの朝・日会談で日本側が核問題、行方不明者問題を持ち出した背景には、日本が会談を有利に進めたいという思惑と米国、南朝鮮の圧力があったと考えられる。遠からず朝鮮が崩壊するだろうとの読みもあっただろう。

 したがって、再開される政府間会談でも日本側がこれまでと同じような態度をとるのなら、会談の進展はおろか、日本に過去の問題を清算する意思の無いことを証明する結果になるだろう。

10万トンの食糧支援

 現在までのところ、朝・日国交正常化に対する日本側の努力は、ある程度感じられる。

 日本の国会が混乱していたにもかかわらず、先月23日に日朝友好議員連盟を結成したことや、日本政府が国連世界食糧機構(WFP)を通じて10万トンの食糧支援を決定したことなどが挙げられる。

 7日に行われた自民党の外交・国防合同部会では、食糧支援に対して反対15人、部会長一任6人、賛成2人という結果だったにもかかわらず、最終的には政府の「専権事項」という表現で事実上、支援を了承した。食糧支援は、行方不明者問題の解決とリンクするという当初の方針を結果的に撤回したことになる。

 この背景には、今世紀に起きたことは、今世紀中に解決するという意思とともに、朝米関係の進展、朝鮮の外交成果がある。

 現在、ニューヨークで行われている朝米会談は、「朝鮮と米国との関係正常化への重要な一里塚になる」(ジェイムス・フォーリ米国務省スポークスマン)と目されており、その後に開かれる朝米高位級会談では、米国の対朝鮮制裁措置の全面解除、朝米平和協定や南朝鮮駐屯米軍撤退問題などが協議されると言われている。

 また今年1月、G7として初めて朝鮮と国交を樹立したイタリアは、フィアットの自動車工場を進出させ、今月末までに外相を派遣するなど親密度を急速に深めている。この他、フィリピン、オーストラリア、カナダ、イギリス、フランスなども朝鮮との国交正常化に向けて動きはじめている。

 冷戦の真っ最中に米国が日本の頭越しに中国との関係を正常化したことを日本政府は苦い経験としてもっている。その二の舞だけは踏むまいというのが、日本当局の考えなのだが、諸般の国際情勢は、日本政府の危ぐが現実問題となりつつあることを物語っている。(元英哲記者)

インタビュー 社  会 経済・経営