民主党、元「慰安婦」被害者救済法案提出へ


謝罪・補償、国の責任盛り込む/背景に「国民基金」の行き詰まり
被害者の名誉回復を

 民主党は、今月下旬にも元「従軍慰安婦」被害者の名誉回復の措置を国の責任で実施する法案を国会に提出する。議員立法として提出し、他党にも共同提案を呼びかける。日本政府が「解決案」として打ち出した「女性のためのアジア平和国民基金」(「国民基金」)事業では、問題の解決は図れないとの判断からで、「あるべき姿」に目を向けた第一歩だ。

実態調査行う促進会議も設置

 民主党が作成した「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法案」は、元「慰安婦」に謝罪を表明し、名誉回復をはかる措置(金銭給付を含む)を国の責任で行おうというもの。総理府に「問題解決促進会議」を設け、「従軍慰安婦」問題に対する基本方針や実態調査を実施することも求めている。

 法案の第1条は、「被害者の名誉の回復に資するための措置を、わが国の責任において講ずることが緊要な課題になっている」としている。法案を作成した背景には、日本政府が元「従軍慰安婦」問題の解決策として打ち出した「国民基金」が行き詰まっている状況がある。

 昨年9月、参議院決算委員会で民主党の本岡昭次参院議員は、「明らかに国民基金の仕事は行き詰まっている。行き詰まったら、やはりその行き詰まりを打開して、問題が解決する新しい政策を提示しなかったらどうにもならない」と、政府に対して「国民基金」事業の見直しを促した。

 これに対して野中広務官房長官(当時)は、「『慰安婦』問題で新たな立法などの措置をとることは、(2国間)条約等が規定している問題ではなく、憲法上の問題もないと考える」と被害者救済に対する前向きな姿勢を示し、それが今回の法案提出につながっている。(「慰安婦」問題の立法解決を求める会の有光健世話人)

「民間への責任転嫁」被害国の声受け止め

 そもそも「従軍慰安婦」問題が国会で論議されるきっかけになったのは、被害者の「告発」だったが、当時日本政府はこの問題に対し「民間業者が連れ歩いた」(1990年6月6日、労働省局長)と、責任を回避した。しかし、被害国から非難が続出するや、内外の反発や世論に押される形で実態調査を始め、93年8月、官房長官談話で国の関与を認めるに至った。

 だが、関与は認めたものの、国家としての被害者救済処置をとらず、その責任を民間に肩代わりさせる「国民基金」を「解決策」として打ち出した(1995年)。民間から募金を集め、被害者に配るという「国民基金」方式は、被害者が一貫して求める法的、国家的責任を回避し、「補償問題は2国間条約で解決済み」との従来の立場を踏襲したものだった。

 「国民基金」に対しては南北朝鮮、中国、台湾など被害国から「新たな加害行為」と非難の声が上がり、受け取り拒否者が続出。日本国内でも日本弁護士連合会が日本政府に「立法による補償措置」を勧告しているほか、国連人権委員会では1992年から毎年のように「従軍慰安婦」問題が論議され、日本政府に賠償や補償を求める勧告が相次いだ。

 日本の孤立は深まるばかりで、「国民基金」事業に出される多額の政府補助金も消化されないまま累積している。

すべての植民地被害者を対象に

 民主党が法律案を発表した2日、記者会見した千葉景子同党男女共同参画・人権・総務ネクスト・キャビネット大臣(参院議員)は、「国の関与を認めた93年の官房長官談話を踏まえて、日本の責任で被害者の名誉を回復する大きな枠組みを決めた」と説明した。

 民主党の法案は、21世紀を目前にして今世紀中に、日本が犯した過去の罪の清算をしようという意思のあらわれでもある。他の党でも旧日本軍の軍人・軍属だった在日外国人に対する補償など戦後補償問題を検討中だが(別項)、被害者は「慰安婦」や軍人・軍属に限らず、大多数を占める強制連行者は放置されたままになっているのが現状だ。

 今回の法案が、日本の植民地支配清算の包括的な立法措置を講じるきかっけになり、すべての被害者の尊厳回復をはかることが求められている。(張慧純記者)

◇民主党

【性奴隷】

   「戦時性的強制被害者(元「従軍慰安婦」)問題解決促進法案」(戦後処理問題プロジェクトチーム、座長=本岡昭次参院議員)を今月下旬に議員立法で提出予定。

【軍人・軍属】

   旧植民地出身の在日の元軍人・軍属への補償法案(年金方式の特別給付金)を検討。

◇社民党

   戦後被害の補償等に関する法律案骨子を昨年7月に発表。

【BC級戦犯】

   旧植民地出身の元BC級戦犯への補償法案検討(戦後補償問題プロジェクトチーム、座長=清水澄子参院議員)

◇自民党

【軍人・軍属】

   旧植民地出身の在日の元軍人・軍属に対する一時金支給法案を検討(「在日韓国人旧軍人軍属等に関する小委員会」、委員長=虎島和夫衆院議員)。

◇公明党

【軍人・軍属】

   旧植民地出身者の在日の軍人・軍属への補償法案検討(政策審議会内に内閣・総務、外交・安保、厚生・労働の各委員会合同のチームを編成)。

◇共産党

   戦後補償に関する基本法の概要を検討(「戦後補償対策委員会」、委員長=吉岡吉典参院議員)

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