ニュースの眼

南朝鮮総選挙と政界再編の行方
落選運動の効果は民主主義の尺度


与党の第1党争いが鍵
3金1李が再び合従連衡

 南朝鮮の第16代「国会議員選挙」の投票日(4月13日)まで、残り1ヵ月を切った。自民連が与党民主党との連立を解消し、第1党のハンナラ党が分裂するなど「1与3野」のたたかいは、混迷の様相を呈している。ここ10年余り、南朝鮮政界は合従連衡(がっしょうれんこう)を繰り返してきたが、それは今回の選挙でも同じで、再び権力を軸にした政界再編が行われるだろう。

ハンナラ党の分裂

 今回の選挙戦を集約すると3金(金大中、金鍾泌、金泳三)1李(会昌)のたたかいだと言える。金大中の民主党と金鍾泌の自民連は分かるとしても、どうして金泳三なのかというと、ハンナラ党から分裂した「民主国民党」(民国党)を金泳三が後押ししているからだ。

 そもそものはじまりは、金泳三からハンナラ党を禅譲された李会昌が、今回の選挙を機会に「雇われマダム」ではなく、名実共にボスの地位を確保しようとしたところにある。党の公認・推薦者を選定する過程で、次の「大統領選挙」の障害になる金潤煥や李基沢ら非主流派ボスを名簿からはずしたのだ。

 これに腹を立てた金潤煥らは、新党作りに走ったものの、李会昌の巧妙な派閥取り崩しのために思うように人が集まらず、そこで金泳三を担ぎ出そうとした。

 金大中に煮え湯を飲ませたいと考えている金泳三にとって、金潤煥らの動きは願ってもないものだったはずだ。そこで「大統領」時代の秘書室長だった金光一らを民国党に送り込んだというわけだ。また全斗煥、盧泰愚も民国党に肩入れしていると思われる。

 金泳三の願いを叶えるためには、院内交渉団体構成要件となる最低20人を当選させなければならず、これを下回った場合、民国党は空中分解するだろう。

単独過半数は困難

 今回の選挙の最大の争点は、民主党とハンナラ党の第1党争い。議員定数は273(地方区216)だが、いずれの党も単独で過半数を確保できない。

 改選前の議席数はハンナラ123、民主102でハンナラ党が多いが、民国党に票が流れるのでハンナラ党の現状維持はまず困難だ。

 一方、民主党は自民連との連立解消でソウル、忠清圏ではやや不利なものの、ハンナラ、民国両党の争いによる漁夫の利があるので、全体的にはやや有利。与党の強みも加えて一気に躍進を目論むが、地方区で100議席確保できるかどうかが、勝敗の分かれ目という見方がある。全国区と合わせて120議席になれば、政界再編の主導権を握れるというわけだ。

内閣制改憲が浮上

 政界再編のもう1つのキーワードは、内閣制改憲。自民連が民主党との連立を解消した理由は、国民会議が民主党に改党した際、内閣制改憲を党の綱領に盛り込まなかったからで、内閣制改憲を行うのなら、「いかなる政党」とも手を組むと表明している。「いかなる政党」には、民主党も含まれている。

 民国党の金潤煥らはもともと内閣改憲論者なので選挙後、民主党―自民連―民国党の連立も十分に考えられる。民国党は院内交渉団体になれなければ、自民連と組む可能性が大だ。

 また民主党の議席獲得数によってはハンナラ党の少壮派グループが民主党に合流する可能性もある。その場合、ハンナラ党と自民連が合流する公算が大きい。

落選対象者不支持

 今回の選挙でとくに注目すべき点は、市民グループが落選運動を展開していることだ。総選市民連帯が8日、ハンギルリサーチ社に依頼して行った世論調査(10の地方で有権者1000人を対象にした電話調査)によると、落選対象者が出馬した場合、58.7%が支持しない(22.7%は支持する)と答えている。

 この落選運動でもっとも痛手を被るのは自民連だが、大勢にどれほどの影響を与えるかは、そのまま南朝鮮の民主主義の成熟度を測る尺度にもなる。

 それから今回初めて勤労者政党として旗揚げした民主労働党がどれだけ票を伸ばすかも見逃せない。
(元英哲記者)

各党の統一安保政策

民主党   政府の統―13原則(武力挑発不容認、吸収統一排除、和解協力の推進)に基づいた「太陽政策」の推進。「国家保安法」改廃の公約はないが、人権侵害の素地がある第7条(称賛・鼓舞罪)と第10条(不告知罪)の改正を検討する余地があるとの態度。

ハンナラ党   「選択的太陽政策」が必要で、「相互主義」の原則を堅持すべきという態度。北に対する現金支援を原則的に禁止し、支援規模が50万ドルを超える場合、必ず「国会」の事前同意を受けるよう強調。保安法については現行を維持。

自民連   「先安保、後統一」の原則。北に対する軍事力の優位と射程距離800キロ以上のミサイル保有、核燃料の国産化を主張。保安法の改正には反対。

民主国民党   一方的な対北支援の「太陽政策」は、北の成長潜在力を助け、逆に緊張状態を激化させる、と主張。南北高位級会談の常設化を公約として打ち出し、保安法は、基本骨格を維持。

民主労働党   平和と統一の志向を原則とし、南北高位級会談の常設化と民間人の自由往来を提案。また南北が軍縮に焦点をあて、それぞれ兵力を30万人水準まで減らすことを主張。保安法の廃止を公約。

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