民族学級で学ぶ子供たち
京都市の場合、3小学校、計72人在籍
ウリマルの授業もっと増やせれば
日本の公立小中学校に通う在日コリアンの子供たちが、ウリマル(朝鮮語)や歴史などを学んでいる民族学級。現在、京都市、大阪府、愛知県で設置・運営されている。京都の場合、府下の同胞父母らのたび重なる要求によって、1951年に設置された。正規のカリキュラムの中に「民族学級」を取り込んでいる京都市の現状を取材した。
チャンジャ、ケンニッパル 「おかずの授業」/みな同じ物食べてる
「学芸会が一番の思い出」/胸に刻まれるチマ・チョゴリ
現在、京都市で民族学級が設置されているのは、山王、陶化(南区東九条)、養正(左京区田中)の3小学校。対象は3〜6年生で、合わせて72人が学んでいる。
週2時間、日本人生徒が習字や読書などを勉強する間に、同胞生徒たちは民族学級でウリマル、社会(歴史、地理、風習)、音楽を学ぶ。カリキュラムの中から、特定の授業の時に同胞生徒が抜けて学ぶことから「抽出学級」と呼ばれる。京都市独特の授業形態だ。
講師は市教育委員会の依頼を受けて、ウリマルができ、朝鮮の歴史や風習に明るい在日同胞が派遣される。普通は通名を使っている生徒も、民族学級ではみな本名を呼ばれる。
生徒の家庭環境は多種多様。「韓国」籍や帰化者、日本籍の子供が大きなウェイトを占める。母親が南朝鮮生まれのケースもある。
民族学級の子供たちが民族心に目覚める一番の機会は、1年に一度開かれる学芸会だ。
「民族学級に入りたての頃は、恥ずかしいから『学芸会だけは絶対出たくない』と言っていた子も、例えば初めてチマ・チョゴリを着て民族舞踊を踊ると、朝鮮人であることを意識し始めるのか、表情が変わりとても喜ぶ。学校生活の事は卒業すれば忘れてしまう事もあるが、学芸会の事はいつまでも覚えているようだ」と、養正小の金桂子さん(48=講師歴16年)はいう。
陶化小の田敬子さん(53=講師歴29年)は、「3年生の時にはリズム感があまりなかった子も、学年が上がるにつれて段々踊りがうまくなってくる。これも民族性が身についていくことの一つの表れだと思う」と話す。
もちろん、ウリマルが話せるようになることが民族心を養う一番の近道だが、授業時間が少ないために、6年生でやっと文字が読める程度だ。「ウリマルの授業をもっと増やせれば」(田さん)というのが講師たちの共通した思いだ。
山王小の崔文子さん(48=講師歴19年)は、家でオモニが作る朝鮮のおかずを1品ずつ持ち寄って、一緒に食べる授業をしたことがある。外見は日本人にしか見えない子が、チャンジャやケンニッパル(ゴマの葉を辛く漬けたもの)を持ってきた。「それを見た子供たちは、同じ物を食べてる、一緒なんやと感じ、共通点を見出していた」(崔さん)
山王小の金必善さん(50=講師歴32年)のクラスには4人兄弟の次男で、普段の授業では全然発言しない子がいる。だが、民族学級では目の色が違うという。「中でも国語の授業は本当に真面目に受けており、試験はいつも満点」だそうだ。4年間の民族学級生活を通して民族心に目覚めた彼は、今春、小学校を卒業する。
「日本の先生たちによると、普段の授業でも朝鮮に関する項目が出てくると、民族学級の子供たちの目が真剣になるそうだ。自分の問題としてとらえていることが分かるという」と金さんは話す。
陶化小の鄭穂美さん(44=講師歴11年)は、「民族学級では成績も関係なく、みんなが同じ民族だという和気あいあいとした雰囲気がある。だから、普段は全然笑わない子でも笑顔を浮かべたりする」と語る。
現在、京都市内の180の小学校に約1600人の同胞生徒が通っている。しかし、民族学級に網羅されている生徒は5%にも満たない。(文聖姫記者)