禁煙成功談

私の場合
趙昌允・東京(会社員)


必ず来る1つの山場
息子の寝言で決意新たに

 米国では、分煙のコストがかかることを理由に喫煙者の雇用を拒否する企業も現れている。しかし「たばこ後進国」と言われる日本での禁煙運動はまだまだです。私はたばこを止めて10年になりますが、その経験を話したいと思います。

20歳から吸い始め、多い時は1日80本

 たばこは20歳頃から吸い出し、多い時は1日80本、うまいというよりももう惰性でした。人生半ばの40歳になる直前、健康のためにそろそろたばこを止めようと思いました。

 そんな時、新聞の投書欄に「たばこを吸いたくなれば、『念彼観音力  怨敵悉退散』という言葉を唱えれば止められる」という禁煙体験者の文がありました。「ネンピカンノンリキ  オンテキシツタイサン」と読み、観音様の力を念じていれば、敵は逃げていってしまうという意味です。

 早速妻や子どもの前で禁煙を宣言し、たばこやライター、灰皿を全部捨てました。「禁煙宣言」は3回目だったので、まるで「オオカミ少年」扱いで信用してくれません。それまで1日だけ止めたことが2回ありました。しかし夕食後、吸いたくて吸いたくてたまらなくなり必死でたばこ屋に走り、買って一口吸った時のうまさと嬉しさ。これでは止められるはずがないです。

吸いたくなると「念彼観音力…」

 しかし今回は違いました。「念彼観音力  怨敵悉退散」と紙に書き、仕事中は持ち歩き、家では壁に張り付けました。食後、無性に吸いたくなると、間髪を入れず「ネンピカンノンリキ  オンテキシツタイサン」と唱えます。10回も続けると口がだるくなってきて、不思議と吸いたい気持ちが萎えてきます。これでいけると思いましたが、決して甘くはありません。

 禁煙を試みた人ならば誰しも体験しますが、必ず一つの山場がやってきます。これをどう乗り切るかです。私の場合、3日目頃にやってきました。

 これを救ってくれたのが当時3歳の次男の寝言でした。その夜、ブツブツと何か言っています。耳をすますと何と「ネンピカンノンリキ  オンテキシツタイサン」と聞こえます。まだ字も読めず、言葉も自由に喋れない3歳児が、意味も分からずアボジの唱えていた言葉を聞いて自然に覚えてしまったのでしょう。

 「あーあ、息子よ、お前にまで心配をかけて。ここまでやってきて禁煙を中断するわけにはいかない。これはアボジとしての体面だ」と決意を新たにしました。息子の寝言のおかげで、その後は本当の意味で決心がつき、今は完全に禁煙しています。

1本でも手を出せばもう元の木阿弥に

 周囲の人の冷やかしや、何かの戯れで1本ぐらいはいいだろうと手を出してしまうと、もう元の木阿弥です。たった1本で止める前の状態に戻ってしまうことが多いそうです。

 私は事あるごとに禁煙体験談を話しています。大体10人に3人ほどが禁煙に成功しているようです。果たしてこの数字は多いのでしょうか、少ないのでしょうか。(投稿、チョ・チャンユン、51歳)

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