平壌レポート

サッカー実況の名解説者


40年間、国家代表育成に尽くす
全国選手権で4強時の東京朝高主将

 朝鮮のテレビでサッカー解説が好評だ。

 出場するチームの戦法、選手の経歴や技術、逸話にいたるまで、分かりやすく説明するリ・ドンギュさん(63)が(写真中央)その「名解説者」。幅広い情報と知識に裏付けられた解説が大衆の信頼を生んでいる。李さんの本業は、体育科学研究所のサッカー研究室室長だ。

 サッカーに出会ったのは日本にいた12歳のころ。当時の東京朝高サッカー部のキャプテンを務めた。

 「日本学校との試合で朝高が連戦連勝する度、同胞たちがどんなに喜んだか。その姿にサッカーが同胞らに大きな力と勇気を与えると実感しました」

 当時、李さんは第33回全国サッカー選手権大会に出場し、東京朝高を4強に導く原動力となる。朝高の活躍は日本のサッカー界に波紋を投げたが、その後朝高は公式戦への出場資格をはく奪された。

 「どんなに憤慨したことか。元々自然科学の道に進もうと思っていたのですが、日本政府の不当な処置に憤激し、一生を朝鮮の体育の発展に捧げようと帰国を決心しました」

 その時から40年。李さんは、サッカー一筋の人生を送ってきた。

 世界のサッカーのすう勢を科学的に分析し訓練方法や方向、選手たちの食事に至るまで、国家代表チームをバックアップしている。指導員の養成にも努める。

 朝鮮の男子サッカーチームは、1966年のワールドカップで、過去2度優勝したイタリアチームを破りベスト8に入るなど栄光の歴史を持つ。その「復活」をかけ、朝鮮代表チームは25日からマレーシアとタイで開かれるアジアカップサッカー選手権大会の予選に挑む。

 「今まで様々な事情により、国際舞台に出られませんでした。しかし、朝鮮のサッカーは近い未来、必ず世界と肩を並べる日が来るでしょう。その日まで頑張ります」。還暦を越えた今も闘志を燃やす。 (千貴裕記者)

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