10回迎えた「イギョラ杯」
朝・日高校サッカー技競い、友情深める


                                                                                                                         
                     第5回大会(1995年3月)     

 朝・日高校親善サッカーの「イギョラ杯」が10周年を迎えた。大会が始まったきっかけは、高校総体(インターハイ)や全国選手権大会への出場資格がなかった朝高生に、日本の強豪校との試合を提供し、「同じ土俵」で勝負する機会を与えようというもので、94年からインターハイ、96年から選手権への門戸解放が実現した後も続けられている。また、「イギョラ杯」は、朝・日の各校が3年生引退後の新チームの仕上がりを確認する大会として定評を得てきた。10年間、大会を支えてきたのは東京朝高サッカー部のOBや日本のサッカー関係者らだ。当初から大会の運営に携わってきた東京都北区サッカー協会の小倉功理事長、今回初めてOBらによる実行委員会を結成した実行委員長の呉泰栄さんらに「イギョラ杯」の意義やこれからの課題を話してもらった。

大変な時こそ支えよう、50期のOBらで実行委員会結成
委員長の呉泰栄さん(東京朝高サッカー部23期生)

 今回初めてOBらによる「イギョラ杯」の実行委員会を結成した。72年に初めて朝鮮を訪問した東京朝高23期と24期生を中心に、50期におよぶ全世代がメンバーに入った。一部のOBによる活動を実行委員会の結成によって、より広範囲なOBの活動へと裾野を広げたかった。

 この間、3度会合を開いたが、その過程で若手OBの団結が強まったと思う。昨年12月のOB会総会にも110人が参加したが、各期から5人ずつ参加するなど若いOBが多かった。

 一時期に比べ、朝高が弱くなったとの話を耳にするが、今大会を通じてそうではないことを実感した。1戦目の鹿児島実業との試合は負けこそしたものの、選手たちの「勝とう」という意欲が伝わってきたし、意識のレベルも高かった。選手たちも「全国」は雲の上の話ではないことを実感したと思う。

 朝高には1日も早く全国大会に出てほしいが、常にベスト・エイト入りするなど一定のレベルを備えたチームになってほしい。OBたちに訴えたいのは、大変な時、辛い時こそ選手たちを支えていこうということ。遠征の費用など保護者の負担は相当なものなので、財政的な支えも必要だ。「負け試合は見たくない」という気持ちもあろうが、試合に足を運んで、選手の表情を見れば、さらに愛着がわくと思う。

インターハイ参加への門戸開放促す
心強かったOB会、監督らの支援

東京都北区サッカー協会 小倉功理事長

 朝高のサッカー部は強いのに、なぜインターハイや選手権に出場できないんだろう、その壁を取り崩す働きかけをしようというのが「イギョラ杯」の始まりだった。日本全国からトップレベルのチームを集めようと強豪校に声をかけた。すべての監督が趣旨に賛同し、こころよく応じてくれた。72年に日本のスポーツチームとして初めて朝鮮を訪問した習志野高校は、OB会の強い要望で毎回参加している。強豪鹿児島実業ははるばる遠方から、長年ライバルだった帝京高校の協力も印象深い。東京朝高サッカー部のOB会で財政を全面的にバックアップしてくれたのも心強かった。

 当時、朝高のインターハイへの参加問題は、高体連の中にも時期尚早との意見があったが、鹿児島実業の松澤監督や南宇和(愛媛)の石橋監督など「イギョラ杯」に参加した監督らが、地元の高体連で「おかしい」と声を上げてくれたことが門戸開放につながったと。監督たちの協力があってこそ続けて来れた。

 参加校を選ぶ基準は選手権での戦績や地域性などだが、これほどのメンバーを揃えられるのも「イギョラ杯」の魅力だろう。春には同様の大会が40程あるが、最近では「出場したい」との問い合わせが10校ほどある。レベルアップを計る大会としても定着したのだろう。

鹿実・帝京・習志野…、参加校監督のメッセージ

 「イギョラ杯」で4回優勝している鹿児島実業・松澤隆司監督 大会を10回も続けてこれたのは、学校や朝高サッカー部のOB、様々な関係者の大きな支援があったからこそ。続けようという意思がすばらしい友好を生んできた。毎回、いいメンバーが集まっているし、普段あまり機会のない関東勢の強豪とボールを蹴れるのも魅力だ。20回、30回に向け、頑張ってほしい。

 1回大会から毎年参加している習志野・本田裕一郎監督 本校サッカー部が初めて朝鮮を訪問したこともあり、朝高とは定期戦を持つなど交流を深めてきた。かつては朝高のように強くなりたくて、朝鮮語の単語を100ほど覚えたこともある。朝高には生徒数が少ない中で日本の高校と競い合わなければならない大変さもあろう。様々な試合で色々なことを吸収し、選手の育成に努めてほしい。かつての朝高のようにグラウンドで暴れる強いチームになってほしい。

 帝京高校・古沼貞雄監督 東京朝高が今まで全国大会に出場していないのは予想外のこと。門戸が開かれるや、すぐに出場できると思っていた。

 東京からは全国大会に2校出場できるので、うちのチームと朝高が一緒に出れればどれほどよいか。強豪が集まる「イギョラ杯」も10回を迎えたので、一層発展させてほしい。

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