1日からスタート―介護保険、制度の中身総ざらい


 1日から、社会保険方式で高齢者への介護サービスを提供する介護保険がスタートしたが、対象になりそうな人の申請はまだまだ低調のようだ。この制度は、同胞も日本人と同様に利用できる。問題はあるが、家庭における介護負担を減らすためにも、まずは利用促進を図りたい。制度の中身を総ざらいする。

申請/市町村窓口に
  
 介護保険のサービスを受けるには、市町村(特別区)から介護が必要と認定されなけらばならない。

 手続きは、役所の窓口に申請して行う。申請を受けた市町村は、調査員を申請者宅に派遣。体の状態などを聞き取り、そこで得たデータをコンピュータで処理して1次判定を出す。

 これと平行して、本人のかかりつけか、市町村の指定を受けている医師が、診察に基づいて医学的な所見を役所に提出する。

 以上の2つのデータをもとに、介護認定審査会が、介護が必要かどうかを判断。要介護となった場合には、受けられるサービスの範囲も決まる。

 認定に不服がある場合は、都道府県の審査会に不服申立をすることができる。

サービス/在宅か施設で

 市町村から「要支援」「要介護(5段階)」と認められると、ランクに応じた利用限度額(表参照)の範囲内で、自宅で介護を受けたり、施設に入所することができる。

 在宅サービスを希望する場合は、ケアマネジャーと相談しながら、様々なサービスの単価と利用回数をかけ合わせてケアプランを作る。ケアプランの作成費は、保険から給付される。

 在宅サービスの柱になるのは、ホームヘルパーによる「訪問介護」だ。排せつや入浴、食事を手助けする「身体介護」と掃除や洗濯を手助けする「家事援助」、両者の折衷にあたる「複合型」がある。

 ほかに、医療機関などから看護婦が派遣される「訪問看護」、リハビリのために半日程度、老人を施設で預かる「通所リハビリ」、家族が旅行に出る場合などに、高齢者を施設に一時預ける「短期入所」がある。

 施設入所を希望する場合には、特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型病床群を利用できる。

保険料/40歳以上が納める

 介護保険では、40歳以上の人が保険料を収める。

 40〜64歳の人は、保険料を医療保険と合わせて収める。

 自営業者など国保加入者は、世帯主が家族分をまとめて支払う。保険料は加入者の所得に応じて市町村などが独自に設定するが、厚生省は平均で月に約1280円と推計している。

 サラリーマンは月給に応じた保険料を労使折半で負担し、家族分の負担はかからない。ただ、本人が40歳未満か65歳以上で扶養家族が40〜64歳の場合は、家族分の保険料を収める場合もある。推計平均月額(本人分)は政管健保で1550円、健保組合で1960円だ。

 65歳以上の人の保険料は、市町村によって異なり、同じ市町村でも所得に応じて5段階に分かれる。月に1万5000円以上の公的年金を受け取っている人は、保険料は年金から天引きされる。年金額がそれ未満の人は、口座振替などで自ら納めねばならない。

 65歳以上の人の保険料は半年間は据え置かれ、その後1年間も半額の軽減措置があるが、滞納には罰則があるので要注意だ。

利用負担/原則1割、軽減も

 介護サービスを利用する際にはさらに、原則として費用の一割を負担する。

 例えば、「要介護5」の人が限度額一杯のサービスを利用すると、3万5830円の負担になる。

 ただ、サービス費用が過度に家計を圧迫しないよう、自己負担の上限も決められており、超過分は払い戻される。

 世帯当たりの自己負担上限は、一般世帯で月3万7200円、市町村民税の課税対象者がいない世帯は2万4600円、生活保護や老齢福祉年金を受けている人は月1万5000円だ。

 これは世帯当たりの限度額なので、同じ世帯にサービス利用者が複数いても、この上限を超えて負担することはない。ただし、上限額の対象にならない費用もあるので注意が必要だ。(金賢記者)

習慣の違い、無年金者/同胞に固有の不安

 介護保険は、サービス基盤の整備の遅れやサービスの質の保証、運営主体となる自治体の財政問題など、多くの課題を残したままスタートしたが、在日同胞には固有の不安材料もある。

 まず、申請後の調査では、1世同胞と日本人調査員との言葉の壁がある。実際にサービスを受ける場合にも、入所施設が日本人向けで、ヘルパーなどが日本人の場合、生活習慣の違いが問題となる。無年金高齢者の費用負担は、さらに深刻な問題だ。

 ただ、現時点ではもはや、同胞高齢者の利用を促して問題を顕在化させながら、解決を図るほかない。同胞高齢者のサービス利用意向は日本人よりも潜在化しており、周囲からの掘り起こしが急務だ。

 同胞人口の多い近畿地方には、ケアプラン作成や訪問介護で同胞が対応してくれるハートフル東大阪(06・6784・3241)やグローバル(大阪市生野区、06・6751・6665)、エルファ(京都市伏見区、075・646・2804)などの事業者がある。兵庫同胞福祉問題協議会(078・251・3681)でも相談を受け付ける。

 施設では、生野区の老人保健施設・ハーモニー共和(06・6775・0001)が同胞向けの対応をしてくれる。堺市には同胞専門の特別養護老人ホーム・故郷の家(0722・71・0881)がある。同ホームは神戸にも11月に開設される。

 弁護士や社会保険労務士が相談員を務める同胞法律・生活センター(東京上野、03・5818・5424)では総合的な相談を受け付ける。

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