アメックス・日本支社、抗議の在日同胞に謝罪
(「便利で安心」。アメックスカードを持っていれば
国内はもちろん、海外でもステータスになると宣伝している)
朝鮮籍を理由にカードを解約 朝鮮籍を理由に今年3月、クレジットカード契約を一方的に解約していたアメリカン・エキスプレス・インターナショナル(アメックス)日本支社の代表が9日、「解約は不当だ」と抗議をしていた在日同胞に会い謝罪した。今回、アメックスがカード契約を回復したいきさつは、解約の理由にしていた米国財務省・海外資産管理室(OFAC)の省令(米国経済制裁措置)が、在日朝鮮人を対象にするものではないとするOFACの回答を確認したというものだ。ことのいきさつを追ってみた。(金美嶺記者、関連記事) 無知な差別の結果、米国の「経済制裁措置」 沈さんはこれに対し、カード受け取り時、外国人登録書を提出しており、その後にプラチナカードの案内まで出しておきながら、いきなり「朝鮮籍は米国の経済制裁措置の対象になる」というのは、「理解できない」として、直接社に出向き抗議をして、近畿人権協会に相談するなどの対応を取った。 その後アメックスは、沈さんとの話し合いをする過程で、在日朝鮮人に米国の経済制裁措置が適用されるのかについてOFACに打診してきた。今年4月、在日朝鮮人との取り引きは可能との回答を得たとして、沈さんにカードの回復を申し出ていた。 今回、OFACが出した「米国の経済制裁措置は、在日朝鮮人に適用されない」とする理由が、「在日朝鮮人の朝鮮籍は北朝鮮国籍ではない」との結論によるものとする点について、沈さんは「問題がすり替えられたような気がする。自分が当初、社に出向いて説明した趣旨は、経済制裁措置を持ち出して朝鮮籍を差別する企業の姿勢について抗議したものだ」と述べた。 もともと、問題をこじらせた米国の経済制裁措置が沈さんになぜ、持ち出されたのかだが、それについてアメックス日本支社の稲垣光彦広報室長は、外国人登録上の問題というより、会員自らが「北朝鮮国籍」を主張したので、米国法令を順守しなければならなかったと説明した。 さらに「共和国国籍」を主張した在日朝鮮人に経済制裁措置が適用されるという論理でいけば、在日朝鮮人は、クレジットカードをもって、米国で買い物すらできないことになる。だが実際は有り得ない。在日朝鮮人は、居住の比重を日本におき、日本の銀行で決済や取引を行っており、法的にも極めて安定した地位を確立しているからだ。 今回のことで、アメックスは沈さんに対し謝罪することで一応決着した。だが、アメックスが米国の経済制裁措置を持ち出し、朝鮮籍のカード会員を除外しようとした問題は、在日朝鮮人の歴史的な経緯も知らず、国際的な流れにも逆行する人権侵害であり、それは未だ在日朝鮮人に無知な差別を強いる日本社会の問題を浮き彫りにしたものだ。 今回の問題は、アメックス社の「無知と誤解」が発端である。窓口担当者は、自分たちの無知をとりつくろうために、米国の経済制裁措置を持ち出し、問題を複雑にしてしまった。さらに縦割り式の企業のやり方が、被害者の態度を硬化させ、問題を長期化させることになった。 アメックス側に差別の意図はなかったと言うが、無知が偏見を生み、それらが差別につながるのだから、「意図していなかった」で済ますわけにはいかない。 これは、日本の一企業の問題にとどまらず、日本社会そのものが、在日朝鮮人の国籍問題について知らなすぎるからだ。 また、われわれ在日同胞も外国人登録上の「朝鮮」表示の法的、政治的意味、そこに込められている心情などをきちんと整理して議論する必要がある。 |