そこが知りたいQ&A
「テロ支援国」と朝米関係の行方
対朝鮮圧力の一環で再規定 Q 1日に発表した「テロに関する年次報告書」で米国務省は、朝鮮を改めて「テロ支援国リスト」に挙げた。その意味は。 A 米国務省は毎年、「テロ支援国リスト」を発表しており、88年以来、今年を含めて13年間、連続して朝鮮を「テロ支援国」と「規定」している。 ただ、この「リスト」は米国が勝手に定めたもので、そもそも米国には朝鮮を「テロ支援国」だと規定する資格も権限もない。 これまで米国は「リスト」を対象国に対する圧力として利用してきた。「テロ支援国」であることを理由に経済制裁を加えて、自国の要求を相手国に呑ませようとしているのだ。したがって、テロを支援しているかどうかの事実関係よりも、米国の要求を朝鮮が呑まないから今回、再び「リスト」に挙げたのだと言える。 Q 具体的に米国は、朝鮮に何を要求しているのか。 A 「テロ支援国リスト」に限って言うと、平壌にいる「日本赤軍派」メンバーの日本送還を「リスト」からの削除の条件の1つとしている。 Q 朝鮮側の反応は。 A 政治亡命してきた「赤軍派」メンバーを保護することは「国際法的に公認された主権国家の合法的権利であり、これについては誰も干渉することができない」(3月8日、朝鮮人権研究協会スポークスマン)との立場だ。 Q 「赤軍派」メンバー送還問題にどうして米国が介入するのか。 A 理由は2つ考えられる。1つは前述したように米国の要求を朝鮮が呑むかどうかの踏み絵 として、もう1つは米国が「世界の警察官」であることを誇示するために持ち出したのだと。 周知のように朝鮮は、自主性を最も大事にしている。朝鮮人権研究協会スポークスマンも強調しているように政治亡命者を保護することは主権国家の権利である。その権利を侵害することで米国は、朝鮮を徐々に自分たちの意図する方向へと引っ張って行こうというわけだ。 朝鮮が「赤軍派」メンバーを送還すれば、次はミサイルの配備、開発の中止(武装解除)、市場経済の導入(社会主義経済の放棄)、人権改善(社会主義体制の解体)と漸次ハードルを高くして、最終的には朝鮮の社会主義体制そのものを崩壊させようというのだ。 Q 国務省のマイケル・シオン反テロ調整官は1日、「北朝鮮がテロ国家解除の可能性がもっとも高い」と述べ、また「報告書」が発表される前、朝鮮が今回の「リスト」から除外されるのではないかといった観測が流れていたが。 A 俗っぽい言い方になるが、 踏み絵 を踏ますためのエサだろう。敷居を低くすることで、朝鮮が米国の要求に応じやすいようにする演出に過ぎない。 Q 米国の「テロ支援国」規定が朝米関係に与える影響は。 A 朝鮮と米国とが朝米基本合意文にうたわれているように政治、経済関係を完全に正常化するためには避けて通れない問題で、米国が自らの責任で解決しなければならない。 現在、朝米間ではワシントンで高位級会談を開く問題が協議されている。この会談では朝米間の根本的問題が話し合われると言われ、新たな朝米関係を開く契機になると見られている。なのに朝鮮が「テロ支援国」という帽子を被ったまま、会談に臨むわけにはいかない。 Q 「テロ支援国規定」による経済制裁というのは。 A 米国が朝鮮に対してとっている経済制裁には2つがある。1つは「敵国通商法」と、もう一つは「テロ支援国規定」。「敵国通商法」による経済制裁は、昨年9月にクリントン大統領が解除すると発表したが、いまだに実施されていない。 「テロ支援国規定」による経済制裁には、緊急食糧支援を除外する援助の禁止、輸出入銀行の保証禁止、武器、防衛物資などの輸出禁止、国際金融機関による借款および事業支援を票決するときに反対票を投じるなどがある。 Q 朝鮮を「テロ支援国リスト」から削除するための手順は。 A 米行政府が米議会に対して該当国が過去6ヵ月間、テロ支援を行わず、今後も行わないと証明しなければならない、とされている。朝鮮は再三にわたって一切のテロに反対することを表明しているので、残るのはクリントン行政府の決断だけだ。ボールは米国側にある。 |