春・夏・秋・冬

 30年前、社会人2年生だった筆者は、理由も聞かされないまま、東京朝高の男子寮に行くことを命ぜられた。仲間と寝食を共にしながら、これまた目的を知らされないまま、46時中、朝鮮語会話を習練させられた。なんのための合宿かを知らされたのは、それから2、3ヵ月後の5月1日だった

▼その日の朝鮮新報は、1面ぶち抜きで、5月15日から朝鮮民主主義人民共和国商品展覧会が上野で開かれると伝えていた。そして、展覧会で商品の解説をしたり、会場を案内するということをこの時、初めて知らされた。「勝共連合」とかの反朝鮮団体の妨害を防ぐために極秘裏に事業を進めていたのだ

▼その展覧会で一緒に仕事した仲間と30年ぶりに再会した。話題は当然、「いまだからこそ言える」話

▼ハードスケジュールのために、職務中に涎(よだれ)を垂らして居眠りしていたとか、両親が本人には知らせずにお見合い相手を会場に連れてきていたとか、30年ぶりの「愛の告白」もあった

▼実は、同窓会に、果たして何人来るのか、心配していた。メンバーの住所録など、あろうはずもなく「失敗した人間は同窓会に出てこない」というジンクスもある。でも半数以上が出席した。商売に失敗したと風の噂に聞いていた人も参加した

▼それぞれの顔には小じわが刻まれ、頭も薄くなっていた。が、冗談でも美男、美女を選んだというだけあって、かつての輝きを面影に残していた。30年前、祖国の隆盛ぶりを初めて紹介した、あの誇りと自負が、控え目だがゆるぎない輝きがあった。 (元) 

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