注目集めるパソコンリサイクル
環境保全へ業界一丸

大量廃棄の現状踏まえ「2005年に60%回収」目標


〈パソコンとカラーテレビの日本国内出荷台数〉(JEIDAなどの調べ)


  インターネット人気と低価格化で、テレビの出荷台数を追い抜くほどの急速な普及を見せるパソコン。その一方で、使い古したパソコンの処理が問題となっている。家電に関しては業界を挙げての環境対策が進んでいるが、パソコン業界でも遅ればせながら対策が発表され、リサイクル促進へ具体的な動きが表れてきた。今年を境に「パソコン大量廃棄時代」を迎えると言われる、日本のパソコンリサイクルの現状を見た。


パソコン出荷量が増えるにつれ、使い古しや在庫との「新旧交代」も急速に進んでいる。(写真は本文と関係ありません)

企業側の意識改名がカギ
「95%リサイクル達成」の業者も

出荷台数100万台

 日本電子工業振興協会(JEIDA)によると、1992年に176万台だったパソコンの国内出荷台数は、95年に512万台、昨年には994万台と過去最高を記録した。JEIDA非加盟の数社を含めると、1000万台の大台に乗ったと見られる。

 95年は米マイクロソフトの基本ソフト(OS)、ウィンドウズ95が発売された年。簡単操作を徹底させたウィンドウズ95の登場がブームに火を付け、ユーザーは企業から一般家庭に移った。OSがバージョンアップするたび、新製品が市場に大量に出回った。

 だが、その裏では大量のパソコンが廃棄されている。その量は昨年の3万6000トンから、2006六年には10万トンを超えるという。

 パソコンの寿命は平均五年。ウィンドウズ95搭載パソコンは今年、寿命を迎える。近年の格安機ブームで購入への抵抗が薄らいでいるユーザーが買い替えに走れば、いらなくなったパソコンや店頭在庫の旧製品は無用となる。今年がターニングポイントと言われる理由はここにある。

 不用パソコンが流れ着くゴミ処理場はどこも満杯で、処理能力にも限界がある。そこで、ゴミの量を減らす最適な方法がリサイクルである。米国では、2005年までに1億5000万台が埋め立て処分されるというデータが、5500万台に下方修正されたほどだ。

「3R」を柱に

 日本での平均リサイクル率は50%前後だが、業界に統一目標がなく、各社が独自基準で算出しており、力の入れようもまちまち。来春施行の家電リサイクル法の対象にパソコンが含まれなかったのも、1つには業界の足並みが揃っていないことが挙げられる。

 だが、環境保全の観点からパソコン廃棄量の抑制は急務。取り組みが不十分な企業に改善を促そうと、業界も重い腰を上げた。

 JEIDAと国内24社は3月、鉄や銅、アルミニウム、プラスチックなどを対象に、統一目標を「2005年度にリサイクル率60%」に設定。リデュース(廃棄物の発生抑制)、リユース(部品の再使用)、リサイクル(原材料としての再資源化)の「3R」を進めると発表した。

 回収システムは、メーカーによる直接回収とリサイクル業者を通じた回収の2つに大きく分かれる。中には中小企業を顧客に100%近いリサイクル実績を誇る業者もある。

 都内のある同胞業者は、産業廃棄物の処理過程を自治体に報告するよう企業に義務づけるというマニフェスト(産廃管理票)制度の手続代行、1台5000円と良心的な価格設定などが、顧客企業に好評だという。

 業者は「当社では95%までリサイクルが可能。企業が最も煩わしがるマニフェスト業務の代行と万全のリユース・リサイクル態勢で、同業他社との差別化を図っています」と語る。

家電業界と連携

 今後もパソコンの出荷量と廃棄量が増えていけば、リサイクルへの需要は高まる。業界では、新法でリサイクルが義務づけられる家電業界と連携しながら、業界を挙げて回収システムの徹底を図っていくようだ。

 だが、中古ショップの盛況など個人レベルではリサイクルが浸透しつつあるものの、企業側の意識には差があるのが現状である。

 「今後、リサイクル業が環境ビジネスとして伸びていくには、リデュース、リユース、リサイクルの必要性をしっかり認識し、意識改革をしていくことが不可欠」(前述の同胞業者)と言える。 (柳成根記者)

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