私の「ライフワーク」

「人と人、人と絵をつないでいきたい」

美術家・崔誠圭さん

埼玉朝鮮初中級学校で働くハルモニを描いた「休息」


テーマは同胞社会の個々人の存在

  「公演の主題にマッチした、いい絵だね」。埼玉朝鮮初中級学校チャリティーコンサート「明るい未来へ羽ばたこう」(2月19日、県青商会主催)の際、ポスターやチラシに載っていた絵が観客らの目を引いた。そこには、アボジに肩車してもらっている子供の微笑ましい姿が描かれていた。

 「初めはなかなかイメージがわいてこなくて苦労した」と、柔和な表情で話す作者の崔誠圭さん(32)。同校の教員をしながらこれまで2回、個展を開いた彼は「絵を書き上げたときの感触は、孤独に走り続けてゴールしたマラソンランナーの壮快感と同じだ」と言う。

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 幼い頃から創作するのが好きだった。

 「サッカーやバレーなど、定番の部活でなく、みんなとは異なったものをしたかった」。同校初級部から美術部に席を置く。レオナルド・ダ・ビンチ、ゴッホ、ピカソなどにあこがれて、将来は「画家」になることを夢見る。

 西洋的なものから民族的なものへと開眼し始めたのは、中1のときに起きた南の光州抗争であった。テレビなどで写し出された戦う学生らの姿を描いた。が、先生から「創作であっても広い意味でのリアリズム、人間の内面世界と真実が伝わっていない」と、厳しく指摘された。

 その後、高級学校、朝大の美術科へと進み研究を重ね、油絵を専攻し、「歴史の中の小さな泡つぶのような個々人の存在をテーマ」にした作品を描いていった。

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 県内にいる日本の美術仲間と学校近辺の日本人との接触を大事にしている崔誠圭さんは、彼らの協力を得て今年と五年前に個展を開いた。今年も学校近辺の主人(喫茶店)が2階の部屋を貸してくれた。個展(2月1〜14日)でのテーマはやはり「人間」。学校の食堂で働くハルモニや卒業生らの姿などを克明に描いた30点の絵は、同胞社会の心温まる風景が投影されていて、観覧者を魅了させずにはおかなかった。

 全国的な規模の「学生美術展」で同校は学校賞を2回(98、99年)受賞した。その際、指導にあたった彼は言う。「絵は見る人がいてこそ光るものだ。これからも生徒らに人と人、人と絵をつなぐ大切さを教えていきたい」 (哲)

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