そこが知りたいQ&A

朝・日会談が延期されたが


議題の調整に難航か/過去の清算、変化ない日本の姿勢

  今月下旬に開くことで合意していた第10回朝・日政府間会談が延期になったと報じられているが、その理由は。

  報道を総合すると、1つは朝・日双方の政治スケジュールと、もう1つは議題の調整難航が指摘されている。

 6月12日から南北最高位級会談が平壌で開かれ、日本でも6月25日に衆院総選挙が予定されているので、朝・日会談はその後が望ましいという指摘だ。7月のサミット後に開かれるとの観測もある。しかし、政治日程よりも議題の調整に難航しているというのが、会談延期の主な理由ではないだろうか。

  議題の調整というのは。

  先月、平壌で行われた第9回会談で朝鮮側は (1) 過去の清算 (2) 国交正常化(3) 懸案問題の解決というロードマップを示した。これに対して日本側は過去清算の重要性については認めたものの、相変わらず「行方不明者問題」や「ミサイル問題」を国交正常化の事実上の前提条件にしようとしている。つまり過去の清算を優先するか、懸案問題を優先するかの調整で難航していると考えられる。

 しかし、朝・日問題の基本は、あくまでも日本がかつて朝鮮に対して行った犯罪行為を清算することで、そのためには謝罪と補償は不可欠だ。

 また、これまでかつての朝・日会談で日本側は核疑惑と「李恩恵」(行方不明者)問題を持ち出して、会談を決裂させたという経緯がある。

 日本外務省は9日に発表した今年度の外交青書で「ミサイル問題」を取り上げるとともに、国交正常化のために努力はするが、「対話と抑止」政策を引き続き維持すると表明した。これは従来の対朝鮮政策となんら変化はなく、こうした状態で朝・日会談を行っても成果を挙げることは難しい。

 11日付の労働新聞は、会談を控えて日本側が「ミサイル問題」「ら致問題」などを解明しなければならないと言っているのは、朝・日会談に人為的な障害を作り出して、会談の進展を妨害するためのものとしかみられない、と指摘している。

  朝鮮のアセアン地域フォーラム(ARF)加盟に日本は賛成しているが。

  その一方で、日本は朝鮮のアジア開発銀行(ADB)加盟には反対している。ARFは地域安保問題を話し合う場だから支持するが、ADBは金融機関なので、(市場経済導入など)それなりの要件が満たされないといけないというのが、表向きの反対理由だ。

 でも実際のところは、朝鮮がADBに加盟すると、そこから融資を受けることができ、それは相対的に日本の朝鮮への物的補償の価値を下げることにつながるというのが、本音ではないか。経済的に困窮している朝鮮にADBの融資はカンフル剤になりうると見ているのだ。一種の経済封鎖、敵視政策の表れだ。

 また朝鮮のADB加盟には、米国も反対している。ここでも日本は、独自の外交政策をとらず、米国に追従する姿勢を見せている。

  過去の清算問題では意見の一致をみているのか。

  みていない。過去の清算問題について朝鮮側は (1) 謝罪――日本政府の最高責任者が直接謝罪し、法的性格を帯びる文書に明記 (2) 補償――反省と誠意を込めた被害者が10分に納得できる実効性のあるもの (3) 文化財の返還――破壊した文化財の補償と略奪した文化財の返還C在日朝鮮人の法的地位――在日朝鮮人に対する謝罪と補償、総聯敵視政策の中止、べっ視・差別の廃止、朝鮮国籍の認定、特恵的な人倫道徳的および法的措置の実施を求めた。

 これに対して日本側は、謝罪については95年の村山総理談話(アジア諸国の人々に対しての謝罪)で、補償については「財産請求権」方式で、それぞれ解決しようとしている。文化財の返還、在日朝鮮人の法的地位については言及すらない。

  それでは朝・日関係は平行線をたどるだけで、国交正常化は当面、難しいのか。

  そうでもない。前回の会談で朝鮮側は「賠償」という言葉を使わなかった。これは日本に対する配慮であり、朝鮮側としては、ぎりぎりの譲歩だと言える。この点を日本側はしっかりと見るべきだろう。

  打開の糸口はあるのか。

  朝・日関係改善において、日本側が主張している「ミサイル問題」「行方不明者問題」は国際的にも通用しない。要は、日本側がいかに過去の犯罪を心から謝罪するかだ。そういう意味では日本側がいかに決断するかが、今後の会談の進展を占う鍵となろう。

TOP記事 健康・趣味 社  会 社会・生活