定期借家制度/施行から2ヶ月余り
単身者が圧倒的、「礼金」は現状のまま
本紙既報のように、良質な賃貸住宅を供給することで、低迷する不動産市場を活性化させようと、3月1日から施行された「良質賃貸住宅の供給促進特別措置法」(以下新法)導入から2ヶ月余りが過ぎた。新法はどのように活用されているのか、現状を見てみた。 61社374件、約4%が利用 大きな物件は今後に 新法には、これまで正当な理由が無い限り、家主が打ち切ることができなかった賃貸借契約を、契約が完了すれば家主側が打ち切りを通告できる項目(定期借家制度)が盛り込まれた。 家主側に確実な家賃収入を保障し、賃貸借の契約終了に際して立ち退き料がかからないなど、賃貸経営の収益採算性の確実な予測ができ、貸す側を保護することで多くの良質な物件が出回り不動産市場が活性化されると期待されていた。 新法施行後、定期借家制度(以下、制度)が、どの程度普及しているのか、日本賃貸住宅管理業協会(管理業協会)の調査統計をみてみた。 調査は、165の不動産会社を対象としたもので、その内、制度で契約をしたと答えたのは61社。契約8772件に対し、374件で全体の約4%だった。 管理業協会では制度についての説明が不動産業界全体に行き届いていないことから、大きく動き出すのはこれからだと見ている。 制度で契約した部屋の面積は、単身者向けの30平方メートル以下が新築、既存物件とも約85%を占め、圧倒的だった。制度で契約すれば家賃が下がることもあると指摘されていたが、実際は横ばいだった。ファミリー向けの物件では下がった例も多少あった。 また、極めて日本的な礼金制度がなくなると言われてきたが、現状では「再契約を前提とした定期契約」となっており、礼金も従来通り支払われているとのことだ。 契約年数は、単身者、ファミリーともに2年が1番多く、ついで単身者は五年、ファミリーは15年と続いている。また、制度では1年未満の契約も可能で、これを活用した単身者もわずかながらいたようだ。 今回は制度で家主側が契約を打ち切ることができるという点から、外国人や高齢者など借りにくい人たちに対するセーフティネット(弱者保護)が心配された。だが、今のところ、この点と関連した契約トラブルは起きていない。 この点を、制度で賃貸契約を結べば、出ていかなくてはならないという心配は、発想を変えれば、契約が完了すれば出ていくという安心感を貸す側に与えるので、「活用次第では借りやすい状況をつくることにもなる」と、定期借家推進協議会は説明している。 管理業協会では、制度は順調なスタートを切ったとみているが、住居という生活上もっとも安定が求められる重要な問題であるだけに、今後も不備があれば改善していくなどをして、ソフトランディングに努めていきたいとしている。 (金美嶺記者) |