山で元気!
両神山
(1723メートル、埼玉県)
スリルに富む鋸歯状の奇岩峰
東京・板橋健脚会は94年5月の発足以来、毎月欠かさずハイキング登山を行っており、参加者は他の支部からも多く、毎回20人前後になる。
6周年になる今回は第81回目。女性2人を含む中高年の精鋭6人で、日本百名山の奥秩父・両神山(りょうかみやま)縦走の難コースに挑んだ。 鋸歯状奇岩峰の連なる両神山のたくさんある登山道のなかで、岩場と鎖場が連結する最も変化とスリルに富んだ八丁尾根コースを辿った。 秩父鉄道三峰口からタクシーで1時間。新緑の中津川渓谷の中を走り上落合橋へ。登山口の表示板には「初心者向きのコースではありません」と書かれていた。すぐ八丁峠へ向かう山道の急登が始まり、大きく息をはずませ喘ぎながら登る。陽光に輝く新緑に山桜が淡い色どりを添え、樹相・殖生が変化していく樹林は、小鳥がさえずり、ヤシオツツジが咲いて美しい。 八丁峠からは静かな尾根歩きとなり、行蔵峠、西岳、東岳の山頂からは、眼下に見下ろす雲海の上に霞む山並みが墨絵のように幻想的な風景を醸し出していた。 冒険心をそそる岩場が連なり、鎖を手繰る登る繰り返しに、疲労が積もり体力の消耗が激しく、腕力に乏しい女性たちは限界に達した。張紀雄氏が用意したザイルで体の安全を確保し、恐怖心をやわらげ、登攀(とはん)補助として難関を越えた。 昨年夏、神奈川・丹沢の沢で行った登山教室で岩登り訓練、ザイルの実習をしたことが今回活かされ、役立った。 山を下りるころ、日は陰り、山小屋に辿り着いたのは日没後30分を過ぎた暗闇の中だった。皆疲れ切っていた。「よくぞ、やったものだ」と薄明りの下で乾杯した。 八丁尾根で最近も滑落事故があり救助のヘリコプターが飛んだと山小屋の人が話していた。 翌朝、予定していた白井差コースは通行止めのため、日向大谷へ下った。ニリンソウの小群落や薄川沿いはブナ林が美しい。 両神温泉・薬師の湯で疲れを癒し、難コースを無事やり遂げた達成感と満足感に浸った。(東京・板橋健脚会会長李福権) 三峰口(タクシー)〜上落合橋〜八丁峠〜行蔵峠〜西岳〜東岳〜両神山〜奥社〜清滝小屋(泊)〜日向大谷口(バス)〜両神温泉(バス)〜三峰口(5月6〜7日、歩行時間9時間) 【山行アドバイス】 八丁尾根コースはベテラン向き、腕力の無い人は無理。日向大谷コースは一般向き、日帰り可。 |