ソクタム―ことわざ辞典
金さえあれば鬼神もあやつれる
「金さえあれば鬼神もあやつれる」 「地獄の沙汰も金しだい」、金さえあれば鬼神も走り使いさせることができるという意味だ。華僑のことわざにも、「金があれば、鬼に臼をひかせることもできる」というのがある。
しかし、物欲心にかられ、金の力で人を支配しようとすれば、必ず災いが及ぶものである。 ところがある日、どうしてもお祝い物を持っていかねばならない、ごく親しいところがあったので、いろいろと思案をめぐらしていた。 それで彼は、この機会に10人の下僕をつれてその家に行くことを決心した。それには深い魂胆があった。普段こき使われてブツブツ文句をいい立てている下僕どもに、他人のご馳走をタラ腹食わせて不満をなだめ、さらに帰りには下僕どもに食卓の銀の匙(さじ)と箸(はし)を1組ずつくすねてこさせようという、実にあくどい計算をしていたのであった。 「これなら多少のお祝い物をもって行っても儲けがある。一挙両得じゃ!」。その計画は見事に的中した。けちな金持ちはそれを見ると笑いが止まらなかった。ところが、1人の下僕だけは匙のかわりに箸を出した。 「なんじゃこれは! わしを見い!」といって、主人は銀の食器を出すのであった。もじもじしていたその下僕は、小さな声でつぶやいた。 「旦那様のようにたいへん立派な物を持ってこようと思えば、私の心臓を泥棒の心臓にとりかえねばなりません。旦那様の心臓をちょっと貸して下さい。そうしたら家でも金でもなんでも持ってきます」 その話にけちな金持ちは胆をつぶし、心臓をおさえて逃げだしたという。 |