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進む住宅ビックバン、より良い家を大切に
このところ、住宅に関する制度の見直しが続いている。金融制度改革になぞらえて、「住宅ビッグバン」とも言われるほど大幅な変化が起きつつあるが、中心にあるのは「より良い家を大切に」との考え方だ。それが購入者にどう影響するかを把握しておきたい。
住宅品質確保促進法の骨子
住宅の平均寿命の比較
違法建築を取り締まる建築基準法の改正、工務店の事情で工事続行が不可能になった場合に建築主に竣工を保証する制度の整備、解体に際する廃棄物の分別処理の取り決め――。 波状に進む見直しのなかでも核と言えそうなのが、欠陥住宅の排除を目指して4月1日から施行された「住宅品質確保促進法」(別項に骨子)だ。 同法は、住宅の基本構造に欠陥がある場合、築後10年間は施工業者に無償修理を義務付ける「10年保証」と、客観的な品質評価に基づいた「性能表示」などの内容からなる。 「10年保証」は、4月1日以降に契約のすべての住宅、アパート、マンションに適用され、壁や柱、梁、床材、屋根などが対象となる。欠陥が見つかった場合、責任の所在を巡ってもめるケースも想定されるが、それには弁護士や建築家などで構成される紛争処理機関が対応する。 基礎部分に対する保証は、地盤の強度に見合っていることが前提になる。不測の災害もあり得るので、契約前に業者としっかり話し合っておく必要がある。 「性能表示」は夏以降に始まる。項目は耐震性、遮音性、省エネルギー性など九つで、建設省の指定を受けた団体や企業が数段階に分けてランクづけする。ただ、こちらは義務でなく任意なので、すべての物件に表示されるとは限らない。 融質/優良物件に期間延長 住宅金融公庫の新しい融資制度も要注目だ。 住宅公庫は4月20日から、新築の木造・鉄筋の住宅でも優良な物件について、融資の返済期間を大幅に延長した。 従来、木造の返済期間はは最長25年、鉄筋の準耐火構造は30年だった。それが、一定の耐久性があることを条件に、木造と鉄筋などの構造区分に関わらず、新築マンションと同じ最長35年の融資を受けられるようになった。 また、10月からは中古住宅向け融資も現行の30年から35年に伸びる。こちらも、耐久性など優良な物件であることが条件だ。 双方とも毎月の返済額が減るため、生活設計の幅が広がることになる。 逆に総返済額が増えるため、熟考が必要なことは言うまでもない。ただ、従来は10年、15年、20年と5年刻みだった返済期間が、10年以上なら1年刻みで選べるので、計画を綿密に立てる余地も出てくる。 流通/寿命を重視、評価も 日本ではバブル期まで、地価は下がらないという「土地神話」が根強かった。住宅資産に対する見方も土地偏重で、建物は軽視されがちだった。メーカーも、供給しては壊す「スクラップ・アンド・ビルド」を経営戦略の柱に据えていた。 しかし、90年代に地価が急落。欠陥住宅問題も注目を浴び、事情が急速に変化した。少子化で新規着工も頭打ちということもあり、住宅市場は質のよい建物を大切に使い、優良な中古物件の流通を促す方向へとシフトしている。 建設省によると、今の日本の住宅の平均寿命は26年で、欧米よりかなり短い。これに対し、日本のメーカーが力を入れ始めたロングライフ住宅は平均寿命60年。耐久性だけでなく、将来の改装を視野に入れた設計が売り物だ(グラフ参照)。 また、建設省の音頭取りのもとに新築や中古住宅の評価会社が相次いで設立されており、流通活性化への貢献が期待されている。 マイホーム獲得は多くの人にとって一生に1度の買い物だけに、こうした傾向は好ましいことだ。それでも、慎重であるべきことに変わりはない。 今、住宅市場は数10年に1度の買手市場と言われる。地価下落ともあいまって価格は安くなり、ここ数年に限って優遇される税項目も多数そろっている。ただ、現在出回っている物件には「土地神話」時代のものも多く、優遇税制の目的は景気回復で、新たな住宅政策とは一線を画す。 さらに、住宅は長寿化するほどに、周囲の住環境との調和や地域再開発との関係性のなかで、資産価値が違ってくる。今後は、いっそう長期的な視点から、物件選びに当たる必要がありそうだ。 (金賢記者) |