生活に定着、コンタクトレンズ

「使い捨て」徐々に普及
衛生面でリミット/汚れたら交換、連続着用可


 近視の人にとっては、メガネとともに日常生活に欠かせないのがコンタクトレンズ。装用者数は日本の人口の1割以上に上り、手軽な視力補助器具として定着した。その主流が今、最長1週間の連続装用も可能なディスポーザブル(使い捨て型)に移りつつある。普及の背景を見た。

格安リテール販売には不安も

ユーザー350万人

 業界団体などの調べによると、日本のコンタクト装用者数は年間約1500万人(1999年度)。そのうち、ディスポーザブル装用者数は2割以上の約350万人(同)に上る。

 ディスポーザブルが生まれた背景には、従来型のレンズが衛生面でネックを抱えていたことがある。

 寝る前に外して洗浄液で洗い、煮沸消毒をし、保存液に浸して保管するというのが、コンタクトの手入れの流れだが、汚れの主成分であるタンパク質は洗っても微量が残り、レンズの表面で固まる。長期間たまると曇って見えにくくなり、目にも害を及ぼす。

 眼球に直接つけるコンタクトには高い安全性が求められるが、衛生管理には限界がある。そこで生まれた発想が「使い捨て」。業界最大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が91年に「アキュビュー」を米国からの輸入販売で市場に投入、他社も追随した。「汚れが蓄積する前に新品に取り替えてしまおうというコンセプト」(J&Jビジョンケアカンパニーマーケティング本部・高山尚子係長)によるものだ。

「乗り換え組」も

 ディスポーザブルは、汚れたら交換するので余計な手入れが必要なく、衛生・安全性を考えると最適。常にスペアを持ち歩くので、急な紛失にも対応できる。

 長期出張が多い人には1週間つけっぱなしのワンウィーク、コストパフォーマンスでは簡単な手入れで2週間もつツーウィーク、安全性なら毎日、新品に取り替えるワンデイと、ライフスタイルに合わせて装用サイクルを選べる点もヒットの要因。高山さんによると、最も数が出ているのはワンデイ、従来型からの乗り換え組ではツーウィークを選ぶ人が多いという。

 これに加え、新聞の折り込み広告の「50%オフ」「2枚で5000円」などの文句で知られる「リテール」(ディスカウント店)の存在がある。この2、3年、開店が相次いでいる。

 医療器具であるコンタクトは、購入の際に医師による適性検査が義務づけられているが、リテールでも当然、医師の処方のもとに販売しており、価格面を除けば専門店と変わりない。むしろ、気軽に買えるリテールが市場活性化に一役買った面もある。格安パソコンがパソコンユーザーを拡大させたのと似た構図だ。

医師の処方必須

 ただ、リテールの「売った者勝ち」的なディスカウント商法には一抹の不安も感じる。リテールがコンタクトをより身近な存在にしたのは事実であり、リテールを一概に否定はできないが、実際、数が大量に出る分、処方が不十分な店が、ごく一部だが存在するのも、また事実である。

 「コンタクトはあくまで医療器具。専門店であれリテールであれ、必ず適切な処方を受け、試用レンズで慣らしたうえで買うという手順は守ってほしい」(高山さん)。目につけるものだけに慎重に慎重を期すことは重要。値段ではなく、くれぐれも医師の存在を確認して店を選ぶことが、トラブルを防ぐ最低限の自衛手段だ。 (柳成根記者)

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