ー伸びる国内古紙の需要ー
環境重視の意識変化、リサイクル技術の向上


行政、業者も再生紙利用に本腰

 最近、古紙の市場に変化が起きている。ほんの2年ほど前までは、保管場所に困るほど余剰傾向だったが、今では不足気味だという。消費者の環境を重視した意識変化や、効率良くリサイクルする技術が高まるなかで、再生資源として古紙の需要は伸びている。

作っても売れない

 これまで問題となってきた古紙の余剰。その原因は、東京23区をはじめとする、自治体が事業所から出るごみを有料化したことで、積極的に回収しはじめたことだ。回収して集めた古紙は、本来なら業者が古紙パルプなどにして使うのだが、業者の方は古紙問屋から価格の低い輸入ものを持ってきて使用していた。

 そうした状況が古紙のだぶつきに拍車をかけ、1昨年まで逆に、中国や東南アジアを中心に56.1トンも輸出していたほどだ。

 その一方で、リサイクル技術も追いつかず、産業古紙などの再生紙ものは黒ずんだりして品質が落ち、結局「作っても売れない」といった悪循環を生んだ。

 これら複合的な要因が重なって、96年頃をピークに古紙はだぶついていた。

 だが、昨年頃から状況は少しずつ変わりはじめた。

 大きくは、行政が国内古紙のリサイクルに本腰を入れて乗り出したことが影響しているが、それに加えて、消費者も環境を重視した再生紙ものを見直すようになり、同時にリサイクル技術がどんどん高くなったことだ。

余剰は解消へ

 古紙の回収を呼びかけている日本製紙連合会は、「余剰はすでに解消されており、積極的に資源回収に出してほしい」という。

 回収方法についても、98年10月に結成された「新聞リサイクル推進会議」が、昨年10月から新聞古紙と折り込みチラシは分別しないで一緒に回収することを決めた。

 古紙は種類によって用途が異なる。折り込みチラシ用の紙は、新聞紙よりも質がよいものが多いため、チラシだけだと上質系古紙になるが、家庭から出る量は少なく、雑誌古紙と一緒に回収していた自治体が多かった。そのため、その中から分別したチラシのほとんどは、実質的に段ボール原紙などの原料に回っていた。

 しかし最近、チラシに使われるカラーインキを取り除ける脱墨パルプの製造が急速に進んだことで、新聞古紙とチラシを混ぜて、再生紙を作ることができるようになった。

 リサイクル技術が高くなったことで、再生紙パルプもほとんどバージンパルプと変わらなくなってきたのだ。

 10年以上も前から紙のリサイクルに取り組んできた大昭和製紙(静岡県富士市)では、質も含めて、直接肌に触れることから起きる消費者の健康に対する不安も「まったく問題ない」水準の規格基準を設けているという。

 行政では今後、こうした現状を踏まえて、再生紙使用を積極的に促していくとともに、業者には自主的な取り組みを呼びかけていく反面、ブランドを意識したバージンもの製品には高税をかけるなど規制も考えていきたいとしている。 (金美嶺記者)

TOP記事 文  化 情  報
みんなの広場
生活・権利