心に残る本/朴賢憲さん(21)
在日の歴史学び民族心養う
3年間の留学同活動を通じて、民族心を培うことができたが、その際、参考になった3冊を紹介したい。
(1)は、1998年1月に死去した元「世界」編集長が96年7月、病で倒れるまでの6年間に、「信濃毎日新聞」に寄せた330回のコラム「今日の視角」を全収録したものだ。政局、沖縄、朝鮮問題、戦後補償、ジャーナリズム論から文明論まで広範な話題を取り上げている。 とくに「大韓航空機事件」や「北朝鮮の核疑惑」などが騒がれた時は小中学生時代で、日本のマスコミの「北」バッシングがひどく、何が本当かを見極めるのは難しかった。しかし書は、そうした批判的な内容を客観的かつ論理的に反論し、本質を見極めている。例えば、 狭き門」は日朝正常化交渉の本質を述べている。日本は「李恩恵問題」を交渉のテーブルに持ち出し、日朝正常化の第1の目的である日本の植民地支配に対する清算という根本問題を避け、会談を決裂させた。こんにち、日朝交渉は再開の道へと進んだが、今度は「ら致問題」を騒ぎ、日本は本来の目的から目を反らそうとしている。 そういった意味で、著者の指摘する内容は、マスコミの操作に惑わされず、物事の本質を見るうえで役に立つ。 (2)は、同胞社会で生じている諸問題に対して、答えを与えてくれる諸材料となった。 大学から本名を名乗るようになったが、この本を読む以前は、友人がなぜ本名を名乗れと言うのかよく理解できないでいた。しかし書で書かれている、在日が発生した根源的原因、日本社会での民族差別、こんにち提起される諸問題などに対する解説を読むと、諸疑問に対する答えを得られた。 在日の歴史を知らなければ、今の自分を知ることができず、今後どのように生きていくべきかという正しい道を歩むこともできない。民族教育を受けなかった人たちには必読の書だ。 (3)は、神は存在するか否かを主人公が論じていく内容で、哲学の授業で勧められた。1927年以来、これまで67回発行されるほどの人気。言葉だけでいる、いないを論じるのではなく、物事を客観的にとらえていこうとするところが勉強になる。哲学をただの学問だけでなく、道徳、倫理的にとらえていくべきことを物語っている。 (仏教大学文学部史学科4回生) |