女のCHINEMA
「エリン・ブロコヴィッチ」
公害企業暴いた、ホットな女
これは実話である。2度の離婚歴、3人の子持ち、無学で無職の女性が、大企業の環境汚染を暴き、600人を越す原告を率いて訴訟を起こし、全米史上最高の和解金を勝ち取った、おとぎ話のような快挙の物語。 エリンは途方に暮れていた。預金残高16ドル。8歳と6歳、9ヵ月の乳飲み児を抱えて、働くにもベビーシッター代すらない。 思い余って、交通事故訴訟で関わった法律事務所にねじ込み、おしかけ就職。ファイル整理の途中、米国最大の公益事業会社・パシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社の環境汚染を知る。エリンは現地に赴き、周辺住民を訪ね歩いて、六価クロム垂れ流しによる地下水汚染の実態を調べ上げる。 20センチの超ミニスカート、7.5センチのハイヒール、豊かな胸元がざっくり開いた派手な服装で駆けずり回るエリンに、弁護士は渋い顔。それでも、熱心な仕事ぶり、人柄の良さ、暖かさで原告の心をつかみ、言葉は粗野だが、威勢のいいタンカを切り一歩も退かぬ粘り強さで、及び腰の弁護士をも引き込む。 1993年、634人の原告をまとめ上げ、資産280億ドルのPG&E社を地下水汚染隠ぺいの事実で訴え、全米史上最高の3億3300万ドルの賠償金を勝ち取った。 このエリンの活躍を支えたのは、子供たちをこよなく愛し、家を守った心優しきパートナーの存在と、「生まれて初めて人から尊敬された」という自負心。そして、普通の生活者として「子供がプールで泳ぐのを安心して見守ること。20歳で子宮摘出に苦しまないこと」と語るエリンは、今も様々の訴訟に関わるタフでホットな女。とまれ現実は映画を越えている。スティーブン・ソダーバーグ監督。米国映画。 (鈴) |