それぞれの四季

「頑張れ、リストラ復活組!」 全佳姫


 パート先の職場で、今朝もまた新入社員が紹介された。

 「よろしくお願いします」

 と、深々と頭を下げる彼は白髪まじりのおじいちゃん。62歳だそうだ。

 「今日から第2の人生です」

 と晴れやかな笑顔がまぶしい。

 私は理工系の専門図書を扱う出版社で働く。

 「商品」である書籍を、大学の教授や企業の技術者たちに電話で紹介する、いわゆるテレホンアポインターだ。

 私を含め、パートの女性たちは、理工系の書籍そのものに関する知識はゼロだ。タイトルや目次を言うだけの簡単な案内なのに舌をかみそうになる。

 そんな私たちの強い味方となるのが、前述の62歳の新入社員たちなのだ。彼らはかつて大企業の技術士や工場長を務めた人々で、年齢や諸々の理由(多分、リストラ)で職場を離れた方々だ。

 社長はツテや募集で、そういう専門の知識を持つ人を集め、営業部や企画編集部に配置する。

 自分の専門知識と経験を生かせることの喜び、新しい職に就けた満足感で、彼らは始終、笑顔と覇気に満ちている。

 「うちはボランティア企業じゃないんだ」

 とぼやく部長を見返す様に、彼らリストラ復活組の営業成績はうなぎ登り。

 不況の嵐が吹き荒れる世の中、従業員の肩をたたき、頭数を減らすことばかりに躍起になっている企業や組織の皆様へ一言――彼らのパワーと存在感は、捨てたもんじゃないですよ。

 ―頑張れ、リストラ復活組! (主婦)

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