在日朝鮮人の入居差別問題
大宮北高の取り組み
根強い偏見、身に染みた
調査を通じて、生徒たちの問題意識はより深まった
(写真は「アジア文化研究会」の生徒たち
60の業者に聞き取り調査、「お断り」が1/4 「同じ住民なのに、外国籍だと家を借りるのに様々な条件を付けられたり、門前払いされるのは、明らかな差別ではないか」――。埼玉県大宮市の市立大宮北高校(小畔東校長)では一昨年から昨年にかけて、県内における在日外国人の居住権問題の実態を独自に調査、県知事や業界団体に現状改善を促す要望書も提出した。だが、今も改善への兆しは見られず、調査に携わった生徒たちは「継続して何らかのアクションを起こすべきでは」との思いを強めている。同校の取り組みとその後を取材した。 一昨年に設定したテーマが、在日外国人の居住権問題。同校で講演した在日同胞歌手の朴保さんの話から、在日外国人が日本で様々な差別を受けている現状を知った生徒たちが「居住権調査委員会」を設け、電話で県内の不動産業者の対応を調査した。 「日本で生まれ育ち、日本語もできる在日2世の友人が、外国籍でも借りられる物件を探しているんですが」。業者の本音を引き出すため、具体的な設定のもとに聞き取りを行った。その数は60件に及ぶ。 結果は「不可」あるいは「不可に近いニュアンス」の返答が4分の1を占め、4軒中1軒が事実上、入居差別を行っているという結果となった。 同様の調査を、住宅基本条例の中で外国籍市民に対する入居差別を禁じている東京都区内の業者にも同時に行ったところ、問い合わせた9軒すべてが、条件付きながら「可能」だった。60軒のうち11軒が「不可」、6軒が「不可に近いニュアンス」という県の結果は、深刻に受け止めるべき数字と言える。 同校の調査資料によると、「あー外人? だめよ外人は」「大家がうるさいので基本的に無理が当たり前」など、あからさまに拒否反応を示す例が目立ち、日本人の保証人を求めてくる業者がほとんどだった。 また、日本で生計を立てる定住外国人と伝えたにもかかわらず、「日本語は話せるか」「日本人に友達はいるか」「社会的ルールを守れるか」といった見当違いの条件を突き付けるなど、あたかも「外国人は犯罪を起こす」とでも言いたげな偏見意識をにじませた回答も多かった。 昨年6月には、生徒代表らが県宅地建物取引業協会と話し合ったが、協会側は現状改善の必要性を認める一方で、「貸主である大家さんの意向の問題が大きい」とこぼしている。 アジアの歴史と民族文化を研究する「アジア文化研究会」を主宰する、担当教諭の江藤善章さん(50)は、「言葉も生活習慣も変わらない在日2世、3世でも、外国籍というだけで借りにくいという現状を、生徒たちも身に染みて実感したようだ」と語る。 調査活動から1年が経ったが、県宅地建物取引業協会では「人権問題として差別がないよう働き掛けてはいるが、条例が県にないこともあり、協会としてはなかなか動きづらい」と、1年前と同じ回答にとどまった。 調査活動の中心的存在だった卒業生の白川めぐみさん(18)と柳岡未希さん(18)は、「やっぱり条例が必要」と口を揃える。 「言葉だけの『検討』ではだめ。欲しいのは同情ではなく、私たち市民の声を行政がきちんとすくい上げて、法的に動いてくれること」(柳岡さん)。白川さんも「入居差別の根幹には、外国人を低く見る固定観念がある。県も業者も、在日朝鮮人の歴史的経緯などの事情は当然、知っておくべきことです」と強調する。 現状に変化がないことを知った、白川さんたちは「県知事にじかに要請するなど、何らかの形で動いていく」ことも考え始めたという。
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