私はコリアン? 横浜の取り組み

年に1度のハギハッキョ(夏期学校)

95年度のハギハッキョ
毎年100人のコリアン児童・生徒が集まる


1日で終わらない本名を/「1人じゃない」とエール送る

 日本学校にいる在日朝鮮人児童、生徒の多くは、日本政府の積極的な施策がないことから、「民族」や出自に触れ合う機会に恵まれていない。しかし、国の施策や予算が整わないなかでも、その環境作りに努めている教員、同胞、自治体は存在する。

同胞同士の出会い

 在日コリアンに向けた横浜での実践の1つに、92年から年に1度(9月の第2土曜日)開かれている「横浜ハギハッキョ」がある。横浜市立の小、中、高校に通うコリアンを対象にして、チャンゴや朝鮮料理、ハングルを教えたり、歴史を学ぶフィールドワークを行う。子供たちが「民族」を体験できる空間で、この場で自分の本名を初めて知る子もいる。

 ハギハッキョは、教室で孤立しているコリアンの子供たちに「民族」に触れ合う機会や出会いを与えたい、という思いから始まった。教員や同胞保護者らが発案して実行委員会を結成。第1回目のイベントには予想を上回る約100人の同胞児童、生徒が集まった。鶴見朝鮮初級学校の訪問や、1、2世の生き方を聞く機会なども設けられ、コリアン同士の様々な出会いが生まれている。

 あるコリアン児童はハギハッキョの光景を見て、「ここにいるのはみんな朝鮮人?」と驚いたという。同胞同士の出会いは、「彼らに1人じゃない」という「エール」を送るのだ。

教員もつながった

 また、イベントには、100人の教員がボランティアで運営に関わる。それまで自分の持ち場で個別に取り組んでいた教員たちが、ハギハッキョで出会うことで問題意識を共有し、その後もコリアン児童が集う「オリニ会」などの取り組みを始めるのだ。教員の「横の繋がり」が出来たこともハギハッキョの成果だ。92年からは市教育委員会も後援団体に加わり、500以上の市立学校に通知文を出すなど、協力関係を築いている。

 ハギハッキョは今年で9回目を迎える。しかし、イベントとして定着した一方、様々な問題も浮かび上がっている。ハギハッキョで本名を名乗っても、その日だけで終わり、というケースもその1つだ。

 当初から運営に携わってきた山本すみ子さん(61、元教員)は「韓国・朝鮮に繋がる子供たちが、自分を隠さざるをえない環境を変える努力が現場で足りない」と指摘する。

 ハギハッキョに参加することは「民族」を表明することだが、現実問題として普段、通名を名乗る子供たちがそこに行き着くことは簡単なことではない。参加者数が横ばいを辿っているのはその証左だ。

求められる広がり

 山本さんとハギハッキョ実行委員会では、昨年11月、ハギハッキョで実践してきた活動のなかから教室や学校行事で取り組みやすいものをまとめた「韓国・朝鮮と出会おう」(写真)を出版した。「現場で実践を」とのメッセージが込められている。

 また、市立生麦小学校の北澤宏之教員(37)は、昨春、「チャンゴクラブ」を結成した。コリアンの子供が「自分」を名乗れるようにするには、異文化を受け止める校風を作ることが先決だと思ったからだ。

 「ハギハッキョに参加する100人の周りには、その存在さえ知らない、来られない子供が多く存在する」(実行委員長の今本陽子教員、55)。まだハギハッキョに足を踏み入れてない彼らを考えた時、現場の取り組みはもっと根を張り、広がりを持つべきだろう。

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 6月初旬から連載した「私はコリアン?」では、横浜で行われている数々の取り組みを紹介してきた。ボランティアで運営されている「オリニ会」、コリアンの子供が「自分」を発見できるような授業の実践、同じアイデンティティー教育を抱える外国人との協調など、現場には子供たちの生き生きとした表情があった。  (おわり、張慧純記者)

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