ざいにち発コリアン社会
キムチにかける大阪の元朝銀マン
ゆくゆくは東京にも進出
黒門市場で
オモニの味が一番や=^商店街で露店販売、スーパーにも進出
今、日本で一番売れている漬物、キムチ。単品では生産規模トップを誇る。今では輸入だけでなく、日本の業者も市場に参入し、1998年の消費量は前年比6万トン増の18万トンを超えた。この朝鮮民族の味、キムチを大阪府内の商店街を巡回して、2年前から露店販売をしている李聖和さん(29、東大阪市在住)。売りは「オモニの味」。「キムチがあまり浸透していない地域や繁華街などで、固定客をつけるのが狙い。店舗が増えることで、客数も当然増える。私たちのような小売店はそうしなければ生き残れない」と語る。 キムチを露店販売する人は昔からいたが、府内の商店街を巡回している人は珍しい。 庶民の台所として知られる黒門市場(大阪市中央区日本橋)や、住吉商店街(同此花区四貫島)、東本通商店街(同淀川区13)などでバザールを開いている。関東地方では基本的に、1週間単位で店舗を貸し出しているが、近畿地方では1日単位が主流だ。 また、池忠堺店(堺市)、フレッシュ新和(東大阪市)などのスーパーにも進出し、キムチの販売を手掛けている。 出店のため、担当者を訪ねて何度も足を運んだ。そのかいあって、現在は約10ヵ所の出店先を確保し、日替わりで移動している。 出店のバロメーターは、例えばスーパーでどれくらいの種類のキムチが売られているかなど。種類が少なければ、ニーズはあまり多くない。「オモニの味」が浸透すれば、固定客がつき、営業は軌道に乗る。そうした地域でコツコツさばく。 なかでも週に1度、必ず店を出しているのが黒門市場。仕入れをする商売人や主婦らで連日、にぎわっている。テレビの料理番組でキムチが紹介された翌日は、売上げがグーンと伸びる。 顧客は、南朝鮮から来たニューカマーと日本の主婦が半々ずつの割合だ。 ◇ ◇ 露店販売のよさは、買い物先で手軽に購入できることと、酸味が出始めた一番食べ頃のキムチを手に入れられること。「キムチは生き物のようなもの」と金さんは語る。 もちろん、関西ならではの値切り も可能。客とのコミュニケーションは何よりも大切だ。 オモニの李道文さん(59)お手製の白菜キムチは、昆布とかつおぶしで取ったダシに、干しエビやイカの塩から、桃缶、ヤンニョム、砂糖、すりニンニクなどを入れ、4種類ほどの唐辛子を加えてまろやかさを出しているのが特徴だ。 客の反応も上々で、「一度買った客は、必ずまた来てくれる」(金さん)ほどだ。 ◇ ◇ 2年前の11月、2日間にわたって東京・新小岩で露店販売を行ったが、大盛況だった。条件が整えば、東京にも進出して見たいという。 また、ゴルフ場のレストランにもキムチをおろしている。 3年前、朝銀大阪を退職し、オモニが営むキムチ工房「岩本商店」(東大阪市)で修行を積み、2年前に独立した。一家の生計を支えるためもあるが、それよりも「朝鮮の味、オモニの味を日本市民にもわかってもらいたい。それが市民レベルでの朝・日交流の始まりだと思っている」。そして最後に、「やはりキムチは『うちのオモニの味が一番や』」、と自信満々だった。 (羅基哲記者) 【李さんのアドバイス】 酸っぱくなったら、キムチはもう食べられないと勘違いする人がいる。酸味は乳酸菌発酵が進む過程で発生する味覚で、旨味の味覚の一部だ。だから、味覚的には酸っぱいほどおいしいということになる。 酸っぱいのはダメという人は、しょうゆにみりん、酢、砂糖、ごまを加えるとよい。しょうゆの味が利いたまろやかな味になる。キムチを細かく刻んで、冷麺やラーメン、冷やっこ、チャーハンなどに入れて食べると、また新しい味が楽しめる。 【キムチの効用】 キムチは、様々な材料がブレンドされて、独特の「こく」と「うまみ」が醸し出され、食欲を増進させる。ビタミンA、B、C、カルシウム、ナトリウムなどの無機質、タンパク質など豊富な栄養素が含まれ、乳酸、こはく酸、りんご酸なども豊富だ。体内の新陳代謝を活発にする働きがあり、健康食品としても高い評価を受けている。 白菜には豊富な植物繊維が含まれ、便秘の予防やコレステロールを抑える働きをし、大腸がんの発生を防ぐといわれ、塩辛などの薬味に含まれるアミノ酸は体内の脂肪を分解する。 人間の身体は、食物の摂取で酸性になりやすいが、酸性になると病気になりやすい。そこでアルカリ食品の摂取が大切になるが、キムチは最も適したアルカリ性食品で、毎日食べれるほど健康にもいい。 |