グローバル新風

ITでもうひとつの「革命」


 世界規模で情報技術(IT)革命が進行するなか、それを支える人材の輩出で急速に注目を集めている国がある。欧米や日本などの先進諸国でも、超大国アメリカのライバル中国でもない。インドである。

 強みは、2点ある。数字のゼロの概念を発見した国であり、歴史的に数学分野に強い。理数系教育も盛んで、小学生の算数では日本の「9×9」と同じ感覚で、「20×20」を覚えさせると聞く。またインターネットの事実上の共通言語である英語を、第2の公用語にしていることもあり、IT産業に適した人材が続々と育っているのだ。

 政府もソフトウェア開発を国策事業としており、すでに米国に次ぐ第2のソフト輸出大国の地位を確立。パジパイ首相は、「あらゆる資源を集中しインドを情報技術大国にする」と広言している。

 IT先進国である米国も、多くのインド人エンジニアを移民として積極的に受け入れており、今や米ハイテク企業の経営トップ陣には必ずと言っていいほどインド人が入っている。シリコンバレーにおいてもIT企業の約1割がインド人の経営だそうだ。インド人エンジニアの収入も高く、ストックオプションなどによって「ITマハラジャ(長者)」が次々誕生している。

 米国での成功を引っさげてインドに帰る人も多い。それらIT人材のUターンがインドソフト産業のさらなる発展を促し、IT技術さえあれば高収入を得られるようになっている。こうした新時代のサクセスストーリーが、旧来のカースト(階級)制度をもすっとばすもう1つの「革命」になっていると言うから面白い。 (李達英=朝・日輸出入商社)

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