月刊「マル」レポート
経済司令官が目指す21世紀の「強盛大国」
南朝鮮の月刊誌「マル」2000年6月号に掲載された、鄭昌鉉記者(中央日報・統一文化研究所)のレポート「世界の潮流を追い強盛大国を目指す」の要旨を紹介する。 輸出基地 今年1月24日から28日まで、金正日総書記は平安北道を訪れ、土地整理事業の現場や、工作機械工場、鉱山、履物工場をはじめ工場、企業所を見て回った。 この間、各所の責任幹部たちに対し、生産性と製品の質が向上したことに満足を表し、「工業水準を21世紀にもそん色ない『チュチェ工業』に変貌させねばならない」と強調。とりわけ、新義州では新たに推進中の南新義州建設計画の報告を受け、中国、ロシア市場をねらった輸出基地を建設せよと指示した。 平安北道での金総書記の行動と指示内容は、北が現在、抱えている悩みと変化の方向を示唆している。食糧問題と電力の解決、そして海外資本誘致のための経済特区の拡大である。 昨年、金総書記の公開活動69回のうち、経済部門の現地指導は23回だった。98年が70回のうち8回に過ぎなかったのに比べると、たいへんな増加ぶりだ。軍総司令官の役割を遂行しつつ、「経済司令官」のソフトイメージへの脱皮を図る姿は大きな変化と認められる。 北が、一部好転した経済を基盤に追求する究極の目標は、「社会主義強盛大国建設」だ。98年8月、初めて「強盛大国」というスローガンを掲げ、「思想の強国を作ることから始め、軍隊を革命の柱にし、その威力で経済建設の目覚ましい飛躍を遂げる」とした。 最近、「強盛大国論」は「経済正常化」という現実的な内容で表されている。 北は98年9月、放漫に運営されてきた内閣の経済機関を統合縮小し、事業の効率を高める方向で機構調整を断行。昨年末、北の全域で連合企業所、総合企業所などのコンビナート式の大規模工場チェーン網が廃止され、個別の工場、企業所、あるいは管理局体制に縮小された。 これまでは想像しにくかった工場、企業所責任者の、勤労者による直接選挙制も導入され、まず新義州、平壌、咸興など主要都市で実行された。これは、実績を上げられる人材登用と、勤労者の労働意欲向上という二兎を追う措置だ。 北は経済を正常な軌道に乗せる突破口を、農業と電力部門に求めている。 北が自力更生の旗印にしている「江界精神」と「大紅湍精神」は、金総書記の経済再生構想に沿う電力増産の模範とされている慈江道江界市と、ジャガイモ産地として有名な両江道大紅湍郡に由来している。 北は金総書記の主導で84年に合弁法を制定。91年12月には羅津・先鋒に自由経済貿易地帯を創設したが、国内外の条件の未成熟で、海外資本の流入はわずかだ。 そこで、金総書記が直接乗り出したのである。鄭周永会長との2回の会談で合意した金剛山観光事業と西海岸工業団地造成事業が最初の成果だ。 2月3日、南浦市港口区域で着工式をした平和自動車綜合工場は、2番目の成果と言える。91年、金日成主席が平壌を訪れた文鮮明・世界平和連合総裁に自動車生産を要請、合意した事業が10年目に鍬入れとなったわけだ。北は南浦に大規模工場を建てることによって、西海岸経済特区時代をひらく端緒を整えた。 北の新義州工業団地への強い執着の故に、現代は海州工業団地とは別途に、新義州に100万坪の軽工業団地を建設する案を検討中だ。 貿易活性化をねらった各種法規も続々制定され、昨年だけでも新たに14の法律が制定・改定された。 北は、世界的な情報化の波と電子産業発展のすう勢を受け入れて、経済再建の土台にしようとの意思を示している。昨年11月24日には、内閣に電子工業省を新設。ソフトウェア分野で南北協力を期待している。去る3月に発足した「朝鮮コンピュータ―三星ソフトウェア共同協力開発センター」は、今年中に南北単一ワードプロセッサを開発予定で、いくつかのソフト開発に着手する。 北は最近の数年間、政治、外交、経済など全分野で大きな変化を見せ、単純に「生き残り」の次元ではなく、「強盛大国」を建設しようとする遠大な抱負まで公然と明らかにしている。 |