取材ノート

グローバル化が問うもの


 グローバル化の波が、急速に世界を覆っている。情報技術革命で世界が狭まり、ヒト・モノ・カネが国境を超える。世界中の人々が政治・文化・経済的な相互依存をますます強めている。

 影響は日本版金融ビッグバンなどを通して、私たちにも直接間接的に及んでいるが、「在日同胞はいずれ、より劇的な変化に直面するはず」――経済を取材しながら、こう感じることがしばしばあった。だが正直なところ、社会主義朝鮮の動きに、その「劇的な変化」の兆候を見るとは思わなかった。

 朝鮮は今、多角外交を積極的に展開中だが、それに導かれてか、経済面でも多彩なパートナーが登場している。

 一月にイタリアと修交すると、同国フィアット自動車の組み立て工場が、南の資本によって南浦に建てられた。
 五月にはオーストラリアと復交したが、今月から同国の企業が、平壌の上下水道の近代化に向けた事業化調査を行う。資金は、クウェート政府が設立した基金から援助される。
 南の現代グループも、北と合意した事業の財源確保のために、外資を積極的に誘致するという。

 また、朝鮮西海の油田開発は、東京の同胞企業が窓口となって資金を募っているが、技術的な裏付けは在豪の同胞科学者が担っている。そして最近では、この事業に在米の企業家が投資を検討しているという。

 確かに、これらの事例だけで、朝鮮経済がグローバル化しているとは言えまい。それでも、グローバル志向の国、企業、個人が、朝鮮を新たなフィールドと見ているのは間違いない。

 世界中のライバルを向こうに回し、「統一朝鮮」で活躍するチャンスを得られるかどうか。グローバル化が在日朝鮮人に投げかけた、重大な問題提起に思えてならない。  (金賢記者)

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