そこが知りたいQ&A

Q朝ロ共同宣言の意義は

新たな友好関係を宣布
国際安保にも多大な貢献


 Q 金正日総書記とロシアのプーチン大統領が19日、朝ロ共同宣言に署名、発表した。その意義は。

 A プーチン大統領が平壌に着いた19日付の労働新聞は、一行を歓迎する社説で「プーチン閣下のこの度の朝鮮訪問は、朝ロ関係を新たに発展させるうえで大きな意義を持つ重要な出来事になる。これはまた、チュチェの強盛大国建設と祖国統一を早めるためにたたかう朝鮮人民に対する励ましになる」と指摘した。

 また、最近、ロシアで新しい変化が起きているとして、国家管理体系の建て直し(中央の権能強化、政府機構体系の整備)、活力ある経済建設(国家統制の強化、付帯条件付援助、協力の排除)、愛国主義教育の奨励と国防力の強化などを挙げている。

 朝鮮と旧ソ連とは、61年に条約を交わしていたが、ソ連崩壊後の95年、ロシアが旧条約の破棄を通告し、今年2月に新しく朝ロ友好善隣条約を締結したという経緯がある。

 そして、労働新聞社説の文脈から推し量ると、朝鮮とロシアは、ソ連崩壊後の一時、疎遠だった関係から抜け出て、「新しい変化を起こしている」ロシアと、新しい善隣友好関係を樹立したのである。

 朝鮮中央通信が、金正日総書記とプーチン大統領との会談で、「討議されたすべての問題で見解の一致を見た」と報じたことも注目される。文言どおり、朝ロ間には、意見の食い違いがないということだ。

 Q 朝ロ共同宣言の主な内容は。

 A 大別すると、朝鮮とロシアとの双務関係と国際問題における協力関係の2つに分けられる。

 Q 朝鮮とロシアはどういう関係になるのか。

 A 朝鮮とロシアは、これまでの伝統的友好関係を強化し、自主、平等、相互尊重と内政不干渉、互恵の原則に基づいて新しい善隣友好関係を築き、国連憲章の目的と諸原則を尊重して国際的安全と安定のために協力すると言うことだ。

 共同宣言の第1項では、朝ロ新条約が「伝統的な友好関係と善隣、相互信頼、多面的な協力を強化し、国連憲章の目的と諸原則を尊重し、国際的安全と安定をはかり、東北アジアと全世界において平等で互恵的な協力を発揮させようとする相互の念願を示威した」と指摘されている。

 Q  日本の新聞などでは、金正日総書記がプーチン大統領に、「外国から人工衛星の打ち上げ用などのロケットを供給されるのなら、自前のミサイル開発を放棄する用意がある」との意向を示したと伝えられているが。

 A 朝鮮側から公式な報道はない。ただ、朝鮮では人工衛星打ち上げ用ロケットと、ミサイルとは明確に区別しており、その点で「ミサイル開発の放棄」は、日本のマスコミが、ロケットとミサイルとを混同したとも考えられる。

 人工衛星の打ち上げそのものは、外国のロケットの利用も十分ありうるが、ミサイルの開発、配備は、国家の防衛に関する問題で、したがって、ミサイル輸出は金銭的保障によって中止することができても、開発配備の放棄は、外からの脅威が無くならない限り、あり得ないだろう。事実、朝鮮と米国は、法的に敵対関係にあり、米国は南朝鮮に巡航ミサイルなど大量殺りく兵器を配備している。

 同時に、外からの脅威が払拭されれば、ミサイルなど開発しないというのも従来から一貫して主張していることだ。

 なお、共同宣言では「一部国家のいわゆる『ミサイルの脅威』」という表現が使われ、これと関連して朝鮮が「自国のミサイル綱領がだれも脅かさず、純粋に平和的性格を帯びていることを確言した」とうたっている。「一部国家」とは、米国を指し、前後の文脈からNMD(米本土ミサイル防衛システム)に両国が反対していることは明白だ。

 Q 共同宣言では、両国の貿易、経済関係の発展もうたわれているが、具体的には。

 A 現在までに報じられているものとしては、シベリア横断鉄道の連結、シベリアからの天然ガス輸送パイプの設置などがあり、共同で建設した企業所の再建については、勝利化学工場、東平壌火力発電所の名前が挙がっている。

 シベリア横断鉄道の連結は、南北共同宣言の発表によって新たに浮上してきたプロジェクトだが、天然ガス輸送パイプの建設や工場の再建などは、以前からあった。冒頭で話したように、朝ロが一時、疎遠な関係にあったことと、ロシアが経済的に朝鮮と協力できる状態になかったからできなかった。それが、今回の共同宣言で、改めてうたわれたのだ。

 朝ロ両国は、名実共に新しい関係へと発展したと言えるだろう。

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