朝鮮経済 着実に進歩
日朝国交促進国民協会第1回研究会
訪朝団報告より
東京のアルカディア市ヶ谷で25日に開かれた、日朝国交促進国民協会(村山富市会長)の第1回研究会「日朝経済協力の展望―金森訪朝団報告」では、団長の金森久雄・元日本経済研究センター会長と副団長の小牧輝夫・日本貿易振興会(ジェトロ)アジア経済研究所研究主幹が、朝鮮側の招きで13〜20日に訪朝した際の感想を述べ、朝鮮経済の現状と展望、日朝貿易の見通しについて語った。両氏の報告をまとめた。 (「韓国」などの「」は編集部) 羅津―先鋒 加工貿易軸に設備整う−金森氏 投資規模拡大にびっくり−小牧氏 今回の訪朝団の目的は、「朝鮮経済の実情を実際に見て、自由な立場から幅広く意見交換を行うことにあった」(金森氏)。訪朝団は滞在期間、平壌市内と羅津―先鋒経済貿易地帯を中心に視察し、朝鮮側の担当局長らと話し合った。 その中で、とくに金森氏と小牧氏が口を揃えて指摘したのが、羅津|先鋒の発展ぶり。港や工場、宿泊施設などを見て回ったが、想像以上に投資が進んでいる印象を持ったようだ。 金森氏によると、同地帯には現在、香港やタイをはじめ多くの国と地域から、150社近い企業が進出。「港には多くの船が出入りし、10月に稼働予定という水産加工工場の設備もしっかり整っていた」という。 自身は1992年の初訪朝以来、今回が5度目の訪朝だったそうだが、96年に訪れた際にはほとんど見られなかったホテルも急増しており、今では1100人の宿泊能力を備えるとの説明を受けたという。 また、小牧氏も「電力も原料も不足し、外貨確保も厳しいが、加工貿易を中心に投資は引き続き進んでいる」と指摘。また、現時点での投資額が契約額5億4000万ドル、実質投資額2億2000万ドルに上ると説明を受け、「8000万ドル程度と聞いていたので、『そんなに進んでいるのか』とびっくりした」と語っていた。 国内経済 朝鮮の経済発展の現状について、金森氏は「スピードは遅いが、着実に進歩している感じに見受けられた。国内総生産(GDP)の減少など、統計上は確かに厳しい数字も出ているが、実際には発展している分野も多かった」と語る。 南の三星電子と共同でソフトウエア開発を行っている平壌の朝鮮コンピュータセンターの、施設の充実ぶりが印象的だったようで、「800人のスタッフが携わり、世界的に評価の高い囲碁ソフトを開発したこともあり、相当高水準との印象を受けた」という。 一方で、両氏とも厳しい食糧・電力事情を強調。今年の旱ばつ被害の状況をかなり心配したという金森氏は、現地での印象を、「困難ではあるが、(水害などが起きた)96〜98年ほど深刻ではないとの印象だった。トウモロコシの出来も良く、ジャガイモ畑への転作もうまく行っているようだ」と語る。 小牧氏も、朝鮮側の担当局長の話として、「昨年度の農業生産高は、当初の予測は下回ったが420万トン前後を確保できた」と指摘。ただ、それでも100万トン近く不足している現状だという。 電力については、「発電所はどうにか稼働しているが、首都の平壌でもたびたび停電するなど、厳しい現状だった」という。 日朝貿易 訪朝団は滞在期間、朝鮮の対外交易の現状と日朝経済協力の展望について、朝鮮側と活発な意見交換を行った。 小牧氏は「米国の対朝鮮経済制裁緩和、欧州や東南アジア諸国との相次ぐ国交正常化など、朝鮮を取り巻く国際情勢の変化で、朝鮮の対外貿易は大きく改善されており、良い環境ができつつある」と指摘する。 半面、日朝間では国交が正常化されていないことがあり、「『関税など日本側の差別措置のため停滞している。日本からの輸入は制限され、減少している』と指摘された。日本への失望感が強まっている分、東南アジアをはじめ他地域との交易に関心が向かっているようだ」(小牧氏)。 ただ、朝鮮側は停滞する日朝交易の現状を打破する意思はあるという。 金森氏は、「朝鮮側は、『国交正常化交渉に向けて、日本からの積極的な投資が必要であり、貿易が強化されれば正常化も進むだろう』と言っていた。日朝間には未解決問題もあるが、『韓国』や米国と協力し、朝鮮に食糧支援をすることが望ましい」と指摘。 小牧氏も、「『国交がない限り、日朝経済の現状改善はないのか』という質問が朝鮮側から出たので、『国交正常化前の経済協力は、政府レベルでは無理でも企業や個人の立場でできること。協力は必要であり、できることから、わずかな可能性を見つけていこう』と答えた」と語った。 |