私のライフワーク

自己を見つめ感情を率直に表す

書道5段・柳奎烈さん


真心を伝える最適な手段

 昨年末、堂々と日本習字五段の免許を取得した柳奎烈さん(65)。5段を取得すると、講座などを開いて他人を指導する資格が得られる。10、20年と、地道に練習を積み重ねても合格することが大変難しいとされるハイレベルな試験に見事合格した柳さんにとって習字とはなんだろうか。「それは、真心を伝える最適な手段」。

 総聯西東京・南部支部の稲城分会で書道教室が開かれたのは5年前。分会事務所に集まった10人の愛好家らが5段の所有者である李東錫さん(非専任顧問)の手本を見ながら、楽しく習字の練習に励んだ。その近所でラーメン屋を営んでいた柳さんも加わり、「毎週火曜日、事務所にはアットホームな雰囲気が醸し出されていた」。

 柳さんは高校卒業後、親兄弟を養うため、画家の夢を捨てて、ダンプ運転手などをしながら必死に家庭を守ってきた。所帯を持ってからも、妻と子供4人を養うためいろんな仕事についた。まともに、ご飯を炊いたこともなかったが、自己流でラーメンの作り方をマスターし、店舗を持つまでになった。「前を見ることも、後ろを振り返ることもできないほど、余裕がなかった」。

  丁度、子供が独立しはじめた頃が5年前であった。「やっと、好きな事ができる。絵を書こう」と、彼は筆を持った。が、腕は動かなかった。集中できず、自分の感情を率直に表すことができなかったからだ。そこで彼は、習字の学習時に筆を手にして一心に技能向上に精進する中で、自己を見つめ、感情表現を育てようと思い立ったのである。

 練習の過程で、字を筆で書く楽しみを味わう。習字は字の 格 を重んじる。跳ねるところは一気に跳ね、止めるところは引き返しながら止める。絵と違って腕で筆をこね回して書くと字は乱れてしまう。柳さんは、書道教室では愛好家と共に刺激しあい、店舗では仕事の合間を見て、何度も練習を重ねた。

  習字はいくら長く続けても、集中度が弱ければものにならない。彼は、教材を見て練習するのは集中力の妨げになると思い、漢字を反復して覚えていった。また、丁寧で的確な作品を毎月1回のペースで出品し、進級を重ねた。そうした地道な努力の結果、受講生の中で、初めて5段に昇進した。今は、以前よりも集中度が増し、精力的に水彩画、油絵を書き、自店の壁に飾っていると言う。また、求めに応じ、店のメニュー表などを作成しては、同胞から喜ばれている。

  「私の真心が伝わって本当に嬉しい」と微笑ましい表情で語る柳さんだ。(舜)

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