2000年版中小企業白書の概要(下)
緊要なベンチャー支援促進
開業率を上回る廃業率
企業家と投資家など多くの関係者が、良好な創業・経営革新の事業環境のもと、将来の大きな利益を夢見て共同作業を行うことで、創業の活性化やベンチャー企業の飛躍的な成長は実現されてきた。 創業・経営革新の成果が評価される直接金融市場、ベンチャー企業への投資を促進する税制、利益の分配とリスクの分担の法的枠組みを作るための会社法制・倒産法制などは、創業・経営革新を支える重要な事業環境である。米国では実際、「ナスダック」のような中堅・中小企業向けの直接金融市場の動きが活発であり、またベンチャー企業投資基金であるベンチャーファンド(基金)の発達や、大学からの活発な技術移転なども整っている。 日本でも、一昨年の金融システム改革法成立を機に、ベンチャーファンドの設立が容易になり、中小企業・ベンチャー総合支援センターも整備されるなど、ベンチャー支援策は充実しつつあるが、一方で開業率と廃業率の推移を見ると、1986年以降は廃業率が開業率を上回っている現状にある。 日本は近年、中長期的な経済成長を実現するため、規制改革などの経済構造改革を進めているが、これらの多くは創業・経営革新をも促進するものとなる。日本も米国など他国の事例を参考に、事業環境を点検し、改善する努力を行うことが重要と言える。 バブル経済崩壊後の95年4―6月期以降、日本の景気は回復基調に転じたかに見えたが、2年後には再び後退し、大手銀行・証券会社の経営破たんに象徴される金融システム不安の高まりとともに、国内総生産(GDP)は一昨年まで五期連続でマイナス成長を記録した。その後、政府が総合経営対策を講じたことから、昨年、ようやくプラス成長へと転じた。 日本の中小企業の景況を見ると、緩やかに改善を続けてはいるものの、金融機関の「貸し渋り」による厳しい資金調達事情などにより、大企業と比較すると回復への足取りは重い。 中小企業から見た金融機関の貸出態度は、大手金融機関の経営破たんが発生した97年後半から急速に厳しくなった。根底には、バブル経済期の過剰投資と、それによって蓄積された不良債権の増大に伴う金融機関の経営不安が、金融システムを不安定にしたことがあると考えられる。 金融機関の中小企業向け貸出の伸び率は、バブル経済崩壊を機に、金融機関側の「貸し渋り」などによって減少した。貸し手にとっては、自らの経営の健全化のほうが大きな課題となったため、信用リスクが高い企業への貸出を抑え、リスクの高さに応じた高金利を要求せざるを得ず、これによって資金調達難に陥る中小企業が急増した。 |