取材ノート

故郷訪問、「統一祖国」の力に


 今年の秋夕は9月12日。朝鮮民族は古来からこの日、各地に散らばって暮らす家族が一つの場に集い、先祖の墓参り(チェサ)を行ってきた。年長者から先祖の美談も聞く。先祖の恩恵を忘れないための風習だ。またこの機会に、一族の族譜(チョッポ)の整理を行い、漏れている一族の名前を書き込む。

 在日同胞の故郷は大多数が南で、慶尚道、済州道、全羅道、忠清道の順で多い。しかし総聯の同胞の多くは、故郷の先祖の墓参りもできず、族譜に名前も明記されてこなかった。そればかりか両親や兄弟の訃報に接しながらも、故郷の地に足を踏み入れられなかった。

 その最大の理由は、「分断の壁」があったからだが、第1回南北閣僚級会談での合意によって、総聯の同胞が訪問団を構成し、故郷を訪問することができるようになった。

 連載記事の取材で会った慶尚南道出身のある1世同胞(73)が、「生きているうちに、裸足で遊び回った故郷を訪ねたい」「先祖の墓参りをし、一族とのきずなを深めたい」と、涙を流しながら語っていた言葉が現実のものとなる。この1世は、1943年の渡日以来、1度も故郷には戻っていない。総聯結成2年後の57年から今日まで専従、非専従として総聯活動に携わり、「統一祖国を」との信条を貫いてきた。

 今回、構成される故郷訪問団は、朝鮮政府の保護と南当局の保証のもと、組織的・集団的に堂々と故郷を訪問することになる。「自分の信条、生き方を変えなくても故郷に行ける」わけだ。

 20世紀最後の今年の秋夕に、故郷訪問が実現すれば、45年の解放後、故郷に足を踏み入れることができなかった1世の苦労が一つひとつ洗い流されていくのではないか。それを21世紀の「統一祖国」の繁栄のための、原動力にしなければと思う。(羅基哲記者)

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