中・朝・ロ、冷戦超えた枠組みに

関係国は自主統一の支援を

駐日中国大使館  程永華公使


 南北首脳会談が開かれる直前の5月29日から31日までの3日間、金正日総書記が中国を非公式訪問した。訪中の意義や朝鮮半島を取り巻く国際情勢について、駐日中国大使館の程永華公使に話を聞いた。   (崔寛益記者)

伝統的友好関係を確認
許さぬ米の「ならずもの国家」論

 ―金正日総書記の中国訪問の意義について。

 たいへん驚いた。とても喜ばしい出来事だった。
 中国と朝鮮は、歴史、文化的にも深い繋がりがあり、1945年以降、建国後も友好的な関係を結んできた。指導者間の相互訪問は、親族訪問のようなもの。

 金日成主席が亡くなられた後、しばらく空間があったが、金正日総書記が国防委員長、総書記になられて、初の外国訪問先として中国を選ばれたことは、引き続き、中国との伝統的友好関係を重視しておられるという姿勢の表れだ。

 これは、中国のみならず、朝鮮と世界各国との関係においても非常に意義のある出来事だったと思う。

 ―直後に南北首脳会談が開かれるなど、朝鮮半島の情勢を考えるうえで、絶妙なタイミングだったと思うが。

 朝鮮半島問題は、冷戦構造を解体するうえで残されていた大きな課題だった。

 朝鮮の南北双方が同じ民族として統一を願う気持ちは、一中国人として十分理解しており、支持している。

 南北双方が当事者として、接触し話し合って問題を解決し、統一しようとするのは大変喜ばしいこと。中国が、最も近い隣国として、南北接触の理想的な場を提供するのは当然のことだし、それなりの役割、サポートを果たそうと思っている。

 金正日総書記としては、南北問題について中国の指導者と深い内容の話をされたと思う。

 ―南北首脳会談に続いて、ロシアのプーチン大統領が訪朝。金正日総書記と会談し、共同宣言を発表した。朝鮮半島を巡る国際関係に新たな構造的変化が起こりつつあるのではないか。

 プーチン大統領の訪朝は、朝鮮半島を巡る情勢に大変好ましい影響を与えた。朝・ロ関係も回復され、停滞期の溝を埋めた。冷戦時代とは違った、新しい、よりオープンな形で中朝ロ関係の枠組みが出来つつある。

 しかし、他方では、朝鮮と米、日との関係が遅れている。中国の立場から見ると、朝米、朝・日関係が速やかに改善、正常化されるべきである。

 そこで一番重要なのは、朝鮮の南北双方が互いに民族の自主的平和統一の道を歩むことだ。それを関係国は応援すべきであるし、朝鮮半島の問題解決に向けて実効的なメカニズムの構築に尽力すべきだ。

 ―米国の対朝鮮政策はどうあるべきか。
 まず、朝鮮を「ならず者国家」呼ばわりするのは失礼千万な話だ。それこそ、国際関係の常識を逸している。国がどういう体制をとるかは、その国の民衆が決めることで、内政不干渉は国際関係の基本原則 
だ。

 次にミサイル問題について言えば、中国も朝鮮と同じ立場だ。NMD(米本土ミサイル防衛)にしろ、TMD(戦域ミサイル防衛)にしろ軍事的に無意味だ。冷戦時代の軍拡競争の論理を未だ貫いている。防衛のためというのはまやかしで、そのようなミサイルを使うこと自体が攻撃行為だ。

 また、政治的にも新たな冷戦を生む危険性をはらんでいる。アメリカは世界の警察官を自認しているが、そういう発想は早く捨てた方がいい。

 ―最近の日本の外交についての印象は。

 日本はもっと、アジアの国々との関係をきちんと考えるべきだ。
 戦後のいきさつから歴代の首相は、日米同盟が日本外交の機軸であると言い続けている。それを変えろ、と内政干渉するつもりはない。が、日本は日米同盟と同時に中日平和友好条約にも署名している。国際法的には同じ効力を持っているということを忘れてはならない。

 そういう意味で、今回の防衛白書にも不満を持っている。ある新聞は、南北朝鮮の和解が始まるや、今度は「中国のミサイルの脅威」を騒ぎたてていたが、まったく子供じみた話だ。そういう感覚で外交関係を処理するのは非常に危ないことだと思う。

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