取材ノート

「健康ランド」に学ぶ


 久々に「面白い」と思えるネタに巡り合った。7日付の経済・経営欄に書いた「温浴業界の現状」である。

 とかく世知辛い世の中にあって、疲れた心と体を癒す「ヒーリング」を求める現代人に、健康ランドやスーパー銭湯、クアハウスなどの温浴施設がブームになっている。伝統的な町の銭湯が衰退するなか、レジャー的要素というプラスアルファが受けたようだ。

 本紙では扱った試しのない分野である。ルポと解説に同胞店舗リストでも付ければ面白い資料になるはずと、勢い勇んで準備を始めたのだが、見えたのは厳しすぎる業界の現状だった。

 まずは同胞業者を洗い出そうと、全国47の商工会に片っ端から電話したが、商売が軌道に乗っていて、かつ本紙掲載を承諾してくれたのは、わずか13軒。ある県では、大手ドラッグストアチェーンが健康ランド経営に乗り出した余波で、同胞の健康ランドがすべてつぶれた。全国でも有名な温泉どころの県では、温浴施設も供給過多状態。競合他店との競争に敗れ、やむなく店をたたんだ人も少なくない。

 取材した「群馬健康ランド千湯」(高崎市)は、県内有数の健康ランドだが、そこでさえ「10年かけて屋号がやっと浸透した。顧客の流れを引き寄せるのは大変な作業」(千尚二営業部長)とのこと。不景気は何もこの業態に限ったものではないが、月並みな言葉ながら、同胞が日本で商売を興すのは簡単ではないと改めて痛感した。

 経済・経営欄の「営業してます」と「商品レーダー」では昨秋以降、18の同胞企業・店舗を紹介した。単発記事でも多く取り上げた。現在、ベンチャーの起業を志している同胞も少なくないと耳にした。経済担当記者としては、またも取材意欲をかきたてられる「面白い」ネタである。 (柳成根記者)

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