交換不要の夢のオイル再生器
「トラスコオイルフィルター」

在日同胞企業
(株)「トラスコ」が特許、実用化へ


トラスコを紹介するパンフレット


  車の走行に欠かせないエンジンオイルの交換は、一般的に5000キロ走行が目安と言われる。ドライバーにとっては面倒でコストのかかる作業だが、最近、在日同胞の経営する株式会社「トラスコ」(本社・東京)が、1度装着すればオイル交換が永遠に不要となる、画期的なオイル再生器「トラスコオイルフィルター」(以下、トラスコ=別項に説明)を開発し、注目を浴びている。 (羅基哲記者)
トラスコとは

 アコーディオン状の谷間をオイルが外から内に通過する従来のフィルター(下の写真左側)は、ろ過面積が小さいうえ、ろ過能力が低く、10ミクロンまでの粒子しかろ過できなかった。ところが、上から下にオイルが貫通して流れるロール状のトラスコ(同右側)は、従来のフィルターと比べて1000倍のろ過面積を持ち、0.01ミクロンの微粒子をもろ過する。
 また、従来のフィルターでは吸収できなかった水分も完全に吸収するので、オイルの劣化も抑える。


従来のフィルター(左)とトラスコ

従来の1000倍のろ過面積/廃オイルで環境破壊防止

消耗品をなくす

 開発したのは、「トラスコ」代表取締役の全明禹さん(68)。咸鏡南道咸興生まれで、日本経営大学、南朝鮮の延世法務大学院卒業後、米国の海外援助処などに勤務。1972年から南朝鮮で、ろ過器や油圧機器に関する研究に従事し、トラスコを開発した。

 そして81年、株式会社「トラスコ」を設立。以来、こんにちまで日本、南朝鮮、中国、米国、欧州連合(EU)などで特許を取得したほか、数々の賞を受賞した(別表参照)。

 全さんは、「エンジンは開発されて百年が経つ。今も研究は盛んだが、それに比べて廃オイルを出さない研究はあまり行われてこなかった。消耗品は作らず、環境を破壊しない商品を開発していくことは、時代の流れだ」と力説する。

増える利用者

 エンジンオイルは、エンジン内部のパーツ各部を循環しながら、異物を洗い流す清掃作業を行うなど、エンジンを回転させるうえで欠かせない重要な役割を果たしている。
 また、この清掃作業を行うオイル・フィルターも、長く使っていると汚れがたまる。オイルも茶色だったものが少しずつ黒く変色する。

 だから、普通乗用車の場合、5000キロ走行または1年を目安としてオイル交換(1回=2400円=4リットル)を行い、オイル交換2回を目安にフィルター交換(1回=1800円)をしなければならない。しかし、トラスコを1回つければ、その作業、コストとも不要になる。トラスコを付けただけで、12万キロ走った車もある。ちなみにトラスコ一個の価格は2万5000円だ。

 現在、トラスコの効果を知り、導入を始めたタクシー会社が増えている。一般ドライバーにも口コミで広がっている。

 利用者は口をそろえて、「燃費がよくなり、エンジンの音も静か。アクセルも軽い」と言う。

 また、トラスコは車だけではなく、運輸から産業まですべてのろ過装置、発電機、船舶、モーターボート、建設機械、農業機械などにも幅広く利用できる。

 同社では今、エンジン内部を清掃する装置も開発中だ。電力会社などから出る廃オイルをなくす研究も進んでおり、大型のオイル再生器が完成するのはそう遠くない(全さん)。

ディーゼル車規制

 東京都は2月、都内を走るすべてのディーゼル車を対象に、排ガス中に含まれる粒子状物資(PM)を取り除くフィルターの装着を義務付ける方針を明らかにした。

 公害防止条例を改正して2003年度から段階的に実施し、2006年度には都内を走る全ディーゼル車に適用する。

 フィルターは、都が一部の自動車メーカーの子会社と共同開発しているが、その費用は1台200万円かかるとも言われる。

 トラスコは、84年の東京都知事優秀発明功労者賞受賞を契機に、都知事が使用する車をはじめ都の公用車に設置された。当時は環境問題に対する関心が今ほど高くなく、さらにオイル業界などの抵抗があったため、数10台にとどまった。

 それから16年、環境問題を取り巻く状況は大きく変わった。

 2002年1月に日本で開かれる世界交通担当相会議では、次世代の低公害車の開発などが大きなテーマの1つになっている。トラスコは21世紀に必要とされる地球環境に優しい商品として、世界初の商品化を目前にしている(現在、モニター販売中)。

 販売代理店=タースコ・ビー販売株式会社(TEL03・3560・7302)、あるいは朝鮮新報社事業局(TEL03・3269・0481、内線339)まで。

受賞した賞
1984年 日本発明振興会、日刊工業新聞社主催の    日本発明大賞で考案功労賞受賞。    東京都知事から発明研究功労者の表彰

 85年 南朝鮮の特許庁主催の優秀発明特許品発    明展示会で銀賞受賞

 86年 ニューヨークで開かれた国際発明家展示    大会で銀賞受賞

 94年 南朝鮮の科学技術研究院主催の清掃技術    大賞で環境部長官賞(優秀賞)受賞

 95年 第23回ジュネーブ世界発明家大会で金・    銀賞受賞

 98年 通商産業省、中小企業事業団などが主催    した第1回ベンチャーフェアJAPAN    98で審査委員会優秀賞受賞。全国約 800    社の応募中、 360社が出展し、うち16社    が同賞に選ばれた。

 99年 南朝鮮で開かれた全世界韓民族学術論文    発表会で日本地域を代表して論文発表

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