日朝議連・中山正暉新会長に聞く

決断にかかる国交


中山正暉会長(左から3人目)らは国会議事堂
を訪ねた朝鮮政府代表団の鄭泰和団長(巡回
大使、右)と会談した(8月22日)


交渉も一歩前進、環境づくりに努力
実態のない幽霊に振りまわされぬ

 2月に発足した、日朝友好議員連盟の2代目会長に中山正暉衆院議員が新たに就任した。第10回朝・日国交正常化交渉が終了、南北交流も進んでいるなかで、今後、議連として両国の国交正常化の下地作りにどのように取り組んでいくのかなど、中山新会長に話を聞いた。

情のある国

 ――両国が動こうとしている時期に、議連の会長に就任したが、今後、国交正常化の動きを踏まえて議連としてどのような活動をしていく考えなのか。

 朝鮮民主主義人民共和国は今年、イタリアを皮切りにオーストラリアなどと相次いで国交を結んでいる。現在朝鮮と国交のある国は、189ヵ国と聞いている。しかし、日本とはもっとも近い隣国でありながら国交がない状態だ。

 日朝議連には現在百87人の国会議員が加盟している。日本には国会批准というものがある。国会議員として、朝鮮との国交の国会批准にむけて、朝鮮を承認する環境づくりのために努力していきたいと思っている。

 ――第10回会談では、朝鮮側の鄭泰和大使が1歩前進したと言っていたが、会談の結果をどのように見ているのか。

 日朝会談は、大変良い雰囲気の中で行われたと聞いている。代表団は国会も訪問し、私と村山富市元首相、野中広務自民党幹事長らと会談した。今回の代表団の中には、黄哲外務省研究員など平壌で何度かお会いし、すっかり顔見知りになった人もいた。やはり交渉も人がやるもの、こういう関係をつくることが大事だと思う。

 まず、知り合い、お互いの意見をきちんと言う。それが出発ではないか。

 3年前、私が初めて訪朝した時、金容淳書記との会談で、「ら致問題」やミサイル問題、植民地支配に対する考え、「従軍慰安婦」問題などについて自分の意見を言わせてもらった。 

  もちろん金容淳書記もそれについて、意見を述べた。朝鮮側と激論になったが、結果的には良かったと思っている。私を案内してくれた朝鮮側関係者が別れ際、飛行機のタラップまできて、抱き合って別れを惜しんでくれた。忘れられない。情のある国だし、この国とは話しができる、と思った。

 交渉は互いに意見を述べあって、相手に伝えた後は、それをどう詰めていくかという段階に進むだろう。

南北分断に責任

 ――南北首脳会談後、朝鮮半島情勢は一変した。日本として南北の和解にどう貢献していく考えか。

 そもそも、日本が朝鮮半島を植民地支配したために南北に分断された。そして、朝鮮半島は大陸と接点があったため、たいへんな苦労をした。

 分断後、朝鮮に対してはまず日本の敵視があった。例えば日朝交渉でも出ている「ら致問題」。新潟少女の場合、20年前には行方不明とされ、「ら致」などという話にはなっていなかった。97年に発表された警察白書が、「ら致」容疑について触れると、それに合わせるように北からの亡命者が韓国で「ら致」について語り、話に火が付いた。時期の一致には大きな力が働いたものと思われる。

 もう1つは、米国の一貫した「韓国びいき」だ。米国は朝鮮半島の一方に軍事的、経済的に加担してきた。日本の公安は、それに合わせて「北の脅威」をあおってきた。

 政治家としての勘だが、色々でている話は、幽霊のように実態のないものだと思っている。往来が無かったがために、日本側はそうした幽霊の実態をつかめないでいた。往来を活発にすれば光があたり幽霊もいなくなる。

 南北間は、何よりも金大中大統領がきちんと対話の相手として朝鮮を承認したのだから、今後も南北交流は活発になっていくだろう。今、日本が具体的に例えば経済的支援をするというようなことは言えないが、かつてのような冷戦的な思考で対応するようなことにはならないはずだ。

人的交流を活発に

 ――今後、日本にとってもっとも重要な課題はなにか、どのような決断が必要か。

 かねてから朝鮮半島は、銃の形に似ていると思っていた。往来を活発にし、対話を持って、銃の安全装置がかかるようにしていければと思っている。

 議連の会長を引き受けた年に、情勢が大きく変化したことは、政治家みょう利につきる。

 今後、国交が結ばれる前でも日本はやれることがある。まず、人的交流だ。互いの国に代表部を置くことも可能だ。

 そして、いまだ厳しい朝鮮の状況を見て、NGOなどの食糧支援もしていくべきだ。政府の直接的な支援だけではなく、民間や国連を通したものなど方法はたくさんある。

 日朝の国交正常化は、難しいというが、私はそうは思わない。

 要するに決断にかかっている。両国が国交を結ぼうと腹をくくっているのだから、1日も早いほうがいいし、できるはずだ。(金美嶺記者)

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