ここまで来た北南関係 今年の展望は?

本格的経済協力元年に


 昨年6月の金正日総書記と金大中大統領との歴史的出会い、6・15共同宣言発表以来、北南関係は、和解と統一に向けて急速に進展している。とくに今年は、金正日総書記の南朝鮮訪問、経済協力の本格化、新義州―ソウルの鉄道と道路連結工事の完成、離散家族の書信交換の実現などが予想される。北南共同宣言の各項目に沿って、その履行状況と展望を整理した。

@統一問題の自主的な解決

 米国を外勢とみなすかどうかが、最大のポイント。北の態度は明確だが、南朝鮮ではいまだに「米国は外勢ではない」とする論調がある。

 しかし、80年の光州事件を契機に南朝鮮では、米国がもはや「友邦」でないとの認識が広まり、とくに、一昨年の老斤里虐殺事件(朝鮮戦争時の米軍による良民虐殺事件)や昨年の米軍誤爆事件、SOFA(駐南朝鮮米軍地位協定)改正運動などを通じて、反米運動が市民の間に定着、根強い運動を繰り広げている。

 こうした反米運動の高まりは、親米=反統一という構図をさらに浮き彫りにした。統一運動と市民レベルで結びつくのは時間の問題だろう。

 もう1つ重要なのは、朝米関係の改善。昨年10月の朝米共同コミュニケで双方は、敵対関係を終了させると表明した。それがどれほど実践されるかが重要だ。朝米が敵同士でなくなったのだから当然、南朝鮮駐屯米軍の地位、役割も変わらなくてはならない。

 同時に昨年、京義線の連結工事と関連して、朝鮮人民軍が米軍との交渉の末に、工事現場周辺非武装地帯の管理権を米軍から北南当事者に移したことは、非常に大きな意義を持つと言える。一部ではあるが、統一問題を自主的に解決するうえで欠かせない事実上の軍事管轄権を朝鮮民族が握ることになったのだ。

A低い段階の連邦制案と連合制案の共通性

 北南統一方案の共通性に関する本格的な論議は、まだ行われていない。南朝鮮では、それ以前の問題として、金大中政権の統一案が全市民的合意をみているかどうかという問題も提起されている。

 統一方案の論議は、各界各層が参加して行われるのが望ましいが、南朝鮮に存在する「国家保安法」は、それを法的に禁じており、したがって、統一方案論議以前に南朝鮮での環境を整えることが重要だ。

 与党民主党は昨年末に保安法の改訂案をまとめようとしたが、政府との意見調整がつかず、結局、国会に提出できなかった。また提出したとしても連立与党の自民連と野党のハンナラ党が反対しているので、改訂案が成立するかどうか、まったく不透明だ。

 ただ、現行の保安法のままでは、統一方案論議ももちろんだが、金正日総書記のソウル訪問、金永南最高人民会議常任委員会委員長の南朝鮮訪問も困難視される。

B離散家族訪問団の交換と非転向長期囚の送還

 離散家族訪問団の交換は、2月末までに第3回を、書信の交換は3月までにそれぞれ行うことで合意している。非転向長期囚の送還は、昨年9月に実施された。

 総聯同胞の故郷訪問団も昨年、2回実施された。今年度の事業計画は未定だが、総聯各本部、支部単位での訪問団派遣も十分に考えられる。

C経済協力と各界の交流活性化

 昨年12月の第4回閣僚級会談で北南間の@投資保護に関する合意書A所得に対する2重課税防止合意書B清算・決済に関する合意書C商社間紛争解決手順に関する合意書がそれぞれ署名された。

 また会談では、@北南経済協力推進委員会の構成運営A漁業分野での協力(朝鮮東海北側水域での南側漁船の操業)Bテコンドー師範団の交換と両団体の接触などが合意された。

 さらに朝鮮アジア太平洋平和委員会と現代グループが取り組んでいる開城工業団地開発は、第1次段階工事が3月にも始まるという。

 これらは、今年が本格的な北南経済協力元年になりうることを示している。

 北南共同宣言の第5項目は、早急な当局間対話の実現で、これはすでに実践されている。

 以上が共同宣言に照らしてみた北南関係の現状と展望だが、いくつかの懸念材料が存在するのも事実だ。

 保安法の廃止、「国防白書」の「主敵」規定などだが、平壌での歴史的出会いが実現した後とそれ以前とでは、北南関係の次元が違うことを南側はしっかりと見据えて対処すべきだろう。(元英哲記者)

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