地名考/故郷の自然と伝統文化
ソウル−@風俗
灰かぶり、ネズミ火、仮面劇
司空 俊
ソウルの風俗は基本的に京畿道と同じである。まずはソウルと近郊一帯の風俗について見ることにする。
安城地方に「灰かぶり」の風俗がある。ここは農村地帯である。朝鮮では普通、新郎が婿入りするとき、新婦の部落まで行っても大礼が終わるまで新婦家の敷居をまたぐことができない。そのうちに連絡が来て、大礼の場に行くわけであるが、途中で新婦家の部落の青年たちが一斉に灰を浴びせるのである。一種の厄除けの行事といえよう。朝鮮語では災厄の「災」はチェで、「灰」もチェである。 「ネズミ火」というのがある。旧正月の最初のネズミの日(初子日)にウスをつくと、その年はネズミがいなくなると信じられている。また、この日の夜に田畑で焚火をし、その火勢によって豊作を占う。そのためどうしても部落ごとの「競争」になり、赤く空を焦がすことになる。冬に田畑を焼くことによって、ネズミを追い払い、雑草を防ぐことができた結果、春に新芽がよく出るなどの効果があったのではないかと考えられる。 ソウル一帯には伝統的な仮面劇がある。それは「山台遊び」とか「山台都監遊び」とか呼ばれているものである。昔はソウルを中心に阿〓(山偏に見)本山台、旧把撥、鷺梁津、退渓院、松坡などが知られていたが、楊山別山台のものが残っている。この仮面劇は十科場、三景からできており、その内容は邪鬼を追い払う踊り、老僧の破戒を風刺したもの、両班階級を侮辱したもの、貧しい平民の生活、男女の憎愛、夫婦げんかなど様々である。仮面は木製や紙製のものが使われる。 李朝時代には特別の機関において、この仮面劇を公儀、嘉礼、迎使、宴楽で催した。その機関が儀礼都監であり、後に山台都監と改称された。それが仮面劇の名称になっているのである。 都監が李朝中期の丙子胡乱(清国の朝鮮侵略)の後に廃止されたため、役者たちは各地に分散して仮面劇を伝え、その結果、それぞれの地方色の濃いものとして、今日まで伝えられてきたわけである。(サゴン・ジュン、朝鮮大学校教員) |