96年の総選挙 安企部資金提供
旧与党に1千192億ウォン
背後に金泳三父子の影
南朝鮮の安企部(国家安全企画部、現国家情報院)の秘密資金が、96年の総選挙で、当時与党だった新韓国党(現ハンナラ党)候補者に配られていたことが、検察の調べで明らかになった。資金の額は1192億ウォン(当時のレートで約162億円)で、受け取ったとされるのは、姜三載ハンナラ党副総裁ら180余人。9日には中央日報が資金を受け取った候補者の名簿と金額を掲載するなど南朝鮮政界を大きく揺さぶっているが、ハンナラ党は「検察を使った野党弾圧」と反発する一方、金大中大統領の秘密資金疑惑(97年)を持ち出すなど、さらに泥沼化する様相を呈している。
1人あたり2億4千万ウォン そもそもの発端は、検察がソウル―釜山高速鉄道の車両選定疑惑。事件を調査する過程で検察が、安企部が管理していた秘密口座を発見、そこに保管されていた資金が、96年4月の総選挙で、旧与党の選挙資金として使われていたことを突き止めた。 今月5日に検察が明らかにしたところによると当時、安企部運営次長だった金己燮が、安企部の予算1157億ウォン(この金額はその後、増えている)を管理し、96年の総選挙で940億ウォンを新韓国党に、95年2月の地方選挙で217億ウォンを民自党にそれぞれ支援したというもの。新韓国党、民自党は、いずれも現在のハンナラ党の前身で、当時の総裁は金泳三だった。 また当時、新韓国党の事務総長兼選挙対策本部長だった姜三載議員が、95年12月から秘密資金を直接管理し、その額が940億ウォンに上るという容疑もつかんだ。 さらに、中央日報が当局から単独入手した資料によると、安企部から資金提供を受けた新韓国党は、中央で278億ウォン(総選挙で72億ウォン、地方選挙で206億ウォン)を使い、総選挙候補者183人に合計433億ウォンを配った(残り446億ウォンは捜査中)。最高は姜三載議員の15億ウォンで、平均すると1人当たり約2億4000万ウォン、当時の野党、無所属候補7人にも配られた。 安企部が秘密資金で政界工作を行っていたことは、以前から指摘されていた。 検察では秘密資金のほとんどが財政経済院の予備費の名目で作られたと見ているが、政界では安企部庁舎の移転過程で作られたとの観測もある。 安企部の予算は機密扱いとなっており、全額だけが計上されて詳細はいっさい明らかにされておらず、安企部長が使途を明かさず独自に使える予算だけでも、年間で数百億ウォンになると言われている。 資金の出所について、民主党の李へチャン最高委員は安企部が庁舎を移転する際に秘密資金を捻出したと主張する。「92年から庁舎新築資金を本予算に計上しはじめ、工事が終わった95年以後も(この新築予算を)減らさなかった」というのだ。実際に91年に969億ウォンだった安企部の本予算は、92年に1988億ウォンと急増している。 逮捕状が出された姜三載議員も、「安企部の資金は受け取っていない」と否定している。 以前、安企部に勤めていたという人物は、98年にある月刊誌とのインタビューで安企部の政治資金を運営次長が直接、大統領の裁可を受けて執行する、と述べたことがある。 金己燮は金泳三の次男、賢哲と非常に密接な関係にあった。事件当時、賢哲は「小統領」と呼ばれるほど大きな権限を持っており、また両者は、97年の韓宝不正融資事件でも逮捕されている。 ちなみに金泳三本人は、大統領在任中、金銭問題にはいっさい関与しなかったと述べているが、父親に代わって賢哲が安企部の秘密資金事件に関与した可能性が高い。 しかし、現在の捜査状況を見る限り、賢哲まで捜査は及ばず、姜三載議員の逮捕という形で幕が引かれると見られ、結局、事件が政争の道具に使われるという見解も一部にはある。(元英哲記者) |