記者が行く体験コーナー
乗馬
指示ひとつで500キロの馬が自在
大切なコミュニケーション
広い自然の中で走り、跳び、自由に動き回る馬の本能を利用し、人馬一体で楽しむ乗馬。日本最大級の乗馬クラブ、オリンピッククラブの宝馬乗馬学校(1985年設立)で昨年末、2日間にわたって乗馬の無料体験コースにチャレンジした。
千葉県内にある同クラブへは、都内各所から送迎バスが出ている。池袋出発のバスに乗ると、席は20、30代の女性でいっぱい。同クラブの木内弘元・総務課長によると、「華麗に駆け回るあこがれからか、八年ほど前から若い女性の人気が高まり、最近では生涯の趣味とする、中高年の人も増えている」と言う。 この日指導してくれたのは、インストラクター歴3年の柳澤誠一朗さん(24、2級ライセンス取得)と丸山善枝さん(31)。 まずは乗馬に関する基礎知識から。「馬の性質は人間と同じでそれぞれ異なるので、それをよく理解することが上達につながる。シッポをテンポよく振っていれば、『手の内に入った』と考えてください」(インストラクター)。 いよいよ馬場に出てパートナーとのご対面。日本中央競馬会の元競走馬、サクラトウヨウオウ(牡11才)。 対面後、馬との接し方、指示の出し方などを教わった。まずは馬の顔、首をなでながらコミュニケーション。指示は手綱の操作で、右、左、真直ぐと自分の意思を伝える。馬はとても依存心の強い動物なので、乗り手がはっきりと自分の態度を馬に示すことが大切だという。 ひと通り説明を受けたところでいざ実践。騎乗すると、視野は一挙に2メートル50センチまで高まる。 1鞍(ワンレッスン)目は、常歩(なみあし)と、両足で馬の腹に合図を送っての発進、停止、右、左へのかじ取り、そしてポールを使ってのS字走など。姿勢は背筋を伸ばし、頭、腰、カカトが直線に並ぶようにする。しかし、視線が高いので、つい下を見てしまう。すると馬への指示もはっきり伝えられない。そこで、少し胸を張って遠くを眺めるようにして騎乗してみると、指示がよく伝わる。つまり美しい無駄のない外見上の姿勢に柔軟性とバランスが伴うことで、馬への負担も減り、正しい随伴ができるということだ。 シッポをテンポよく振るトウヨウオウ。どうやらこの馬とは、 馬が合う ようだ。 2鞍目は、時速10キロの軽速歩(けいはやあし)。初心者にはとても重要な練習の1つ。1歩おきに上体を上げて反動をやわらげ、立ち座りを繰り返す。このことによって速歩が続き、さらには時速20キロの駆歩(かけあし)へとつなげることができる。 2日目の3、4鞍目では、軽速歩と駆歩を集中的にレッスン。理論上は理解できたものの、立ち座りのタイミングがなかなか合わない。上達の早い人は、この段階で駆歩もマスターするとのことだが、そうはいかずレッスン修了。だが、指示1つで体重500キロもの馬を動かし、馬と1つになることができる楽しさ、素晴らしさに魅了されてしまった。 |