手記/1世の聞き取り調査を終えて
忘れてはならない我々の歴史
金正明(朝鮮大学校歴史地理学部3年)
昨年10月、われわれ朝鮮大学校歴史地理学部3学年は、社会実習の一環として、朝鮮人強制連行の真相を調査する千葉県朝・日合同調査団の先生らと共に、千葉県下の1世同胞の証言を収集するフィールドワークに参加した。
23人の1世宅を訪ね、植民地時代や解放後の在日朝鮮人運動に関する話を聞き、12月に1冊のパンフレット「千葉県における在日同胞1世の証言」としてまとめた。証言はビデオにも残し、総聯の本部や支部、同胞らから地域の在日運動の貴重な財産になると喜んでもらえた。 しかしわれわれは当初、フィールドワークへの参加に多少ちゅうちょしていた。「過去に起きた悲劇を経験していないわれわれがはたして、1世の話を理解することが出来るのだろうか」「彼らの悲しみや喜びを感情的に共有することが出来るのだろうか」「もし出来ないとしたら自分自身の民族性というものをどのように認識すれば良いのか」など、ちゅうちょというよりは不安といった方が正しかったかもしれない。 しかし、証言収集の過程で、そのような不安はどこかへ消え去ってしまった。 若くして強制的に連行されたり、勉強させてやるとだまされ連れてこられたり、生活苦から身寄りを頼り渡航して来るなど、日本に渡ってきた理由はいろいろだったが、誰一人として苦労されなかった人はいなかった。 「鮮人」「半島人」とののしられながら炭坑やダム工事、飛行場建設で酷使された人や、空襲で家族全員をなくされた同胞の証言、また解放後の半世紀にわたる在日朝鮮人の権利獲得のためのたたかいなどの話に、われわれの心の中にくすぶっていた民族的感情が次第に燃え上がっていくのを、日に日に感じるようになったからだ。 フィールドワークを終え、われわれはいくつかの結論に達した。 1つは1世が歩んできた日々そのものが、われわれが決して忘れてはならない「在日朝鮮人の歴史」であり、このような歴史を大切にすることによって、新しい世代の民族性も守れるということだ。 もう1つは、このような役割を積極的に担って行くことが歴史地理学部の学生たちの使命であるということだ。 なぜわれわれが異国の地で生まれ育ったのかという根本原因を知るためにも、そしてこれからどのように生活していかなければならないのかという問いに答えを出すためにも、植民地支配に対する清算がきちんとなされるためにも、わい曲された歴史に押しつぶされることなく歴史の真実に光を当てつづけて行こうと思う。それが21世紀の、在日朝鮮人運動を担って行く新しい世代の役目だ。 われわれは引き続き、1人でも多くの1世同胞の苦難に満ちた体験を残していくため、頑張っていきたい。【資料の問い合わせ=朝鮮大学校歴史地理学部(042・341・1331)】 |